携帯から機械的な音が流れて目を覚ます。

窓からは暖かな日が差し込んでいる
ぐーっと伸びをしてから隣でまだ寝ている徹さんの肩をつかんで揺らす


「徹さん、朝ですよ、起きてください」

「んー・・・?なに、まだ6時じゃん、もうちょっとゆっくりしよ・・・」

「朝練遅れちゃいますよ」

「今日はいかなーい」



ぎゅううと苦しいくらいに抱きしめられる


・・・何堂々とサボり発言してるんだこの部長・・・



まあ、いいか。どうせきっとしばらくしてから一さんから連絡くるだろうし、そのとき怒られるのは俺じゃなくて徹さんなのだから。



抵抗するのを止めておとなしく徹さんの腕の中で横になると長い睫や通った鼻筋、整った口がうつる



こんなに顔が整っているのだから、
そりゃ女の子は好きになるよな、といつもの黄色い声援が飛び交う光景を思い出した。




「そんな見られたら及川さん焦げちゃう」

「狸寝入りなんて、趣味悪いですね」

「酷い言い草だなぁ」




わしゃわしゃと頭を撫でられる。
寝癖で酷い髪の毛がさらに進化を遂げている様子は鏡で見てとらなくてもわかる




「夏芽ちゃん、いつもより髪がサラサラ!」

「・・・そうなんですか?」

「うんっ」



ふふん、とご機嫌に鼻歌を歌いだした徹さんをみて、
そういえば昨日髪を乾かしてもらったことを思い出す。


ほぼ毎日触っているであろう俺の髪については自分自身よりも徹さんのほうがよく知っているようだ。




「それよりも徹さん、いつまでこうしてるつもりですか?」

「夏芽ちゃんがお家出て行くまで!」

「はぁ!?俺行くの昼過ぎなんですけど」

「うん、知ってる」

「まさか、学校にも行かないつもりですか!?」

「へ?うん」



当たり前だ、とでもいいたげな顔に深いため息をつきたくなる


すると携帯がパッと光って音がなった。

するりと徹さんの腕の中から抜け出すと携帯に表示されているのは岩泉一、という文字だった




「もしもし」

『おう、夏芽か。及川のクソいるんだろ?変わってくれ。アイツ、自分の携帯切ってやがる』

「はぁ、そうでしたか、今変わりますね」




一さんからです、と俺の携帯を差し出すとうぅ、と顔をしかめてしぶしぶ受け取った。




「やっほ、岩ちゃ『おいクソ川てめぇ、堂々とサボりかクソボケェ!!』
・・・朝から元気だなぁ」



スピーカーじゃないのに俺にまで聞こえる一さんの声に苦笑をするが、悪いのは徹さんだ。
黙って怒られてくれ




『てめぇ、朝練ももう終わるけどまさか学校にまで来ないつもりじゃねぇよな』

「あはっ、なんでわかったの、岩ちゃん!」

『クソか!てめぇ、クズ及川!!』

「もう、岩ちゃん、同じ悪口ばっかり!!」




向こうでブチィっと音がした気がした。
気がするどころか、きっと気のせいじゃない



一さんがキレてしまう前に徹さんから携帯を奪い取る



『てめ、っ「も、もしもし!一さん!!」・・・おう』

「すみません、俺から出発までは一緒にいてほしい、って頼んだんです、ごめんなさい。」

『はぁ・・・そうかよ。いーよ別に謝らなくて。』

「午後からは絶対に行かせますんで!」

『ったく・・・わかったよ。夏芽に免じて、だ。そうクソ川に伝えてくれ。どうせアイツのわがままだろ。』

「う、・・・言い返す言葉がありません・・・。」

『じゃあ、もうすぐ授業始まるから切るわ。頑張ってこいよ、夏芽』

「はいっ!ありがとうございます、じゃあ、また!」




赤いところをタップして通話を終えるとなぜか顔を両手で隠した徹さんがベッドの上で丸まっていた




「何してるんですか・・・」

「夏芽ちゃん、ほんと、男前すぎて・・・!!」



顔を真っ赤にされる理由がどこにも見当たらないし男前などと言われるような行動もしてないだろうが、と頭の端で思いながらはいはい、と今度は俺が徹さんの頭を撫でる。


するとガッと手を捕まれてギョっとすると
のそり、と起き上がる




「夏芽ちゃんは俺を殺しにかかってるんデスカ・・・」

「バカ言ってんじゃないです」



一さんまではいかないが肩をポカっと叩くと
大げさに痛いっっ!!と照れ笑いながら言うもんだから
哀れみの意味を込めて徹さんを見るとそんな冷たい目しないで!!と叫ばれてしまった。


朝から近所迷惑な人だ、と頭を抱えながらベッドから抜け出した。






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