「かっこいい!」

…何故こうなった。

苗字名前6歳、突然男に抱き締められました。きゃあ、痴漢よ(棒)
子ども同士のかわいらしい戯れ、ただし女の子の方の目が限りなく死んでいる。を現在進行形で何故か当事者として送っています。もう一度言う。何故こうなった。

「ねぇ、なまえおしえて!」
「…」
「おねがい!」

キラキラとした目でお願いしてくるせいいちくんはそれはもうかわいらしい。だが断る。
私はせいいちくんを突き飛ばして離し、ベンチから立ち上がった。そろそろ子どもの相手はやめてその辺の大人引っ掻けて家に帰ろう。…煩いな!所詮ただの迷子だよ!

「わたしとかかわると、あと10ねんないぐらいでろくなことがない。いいこだからおうちにおかえり」
「なにいってるの?」
「いいからかえれっていってんの」

関係無い純粋な少年を巻き込んじゃいけない。なんて、そんなお綺麗な理由じゃなくてただ面倒臭いだけ。

「精市!」
「あ、ママ!」

随分と美人さんな母親が迎えに来たものだ、これ好機!と私は駆け出した。

せいいちくんを上手く撒けたようで、さて適当に優しそうな大人を捜そうとして、ふとさっきのせいいちくんの母親の顔が頭に浮かんだ。


…せいいち?

幸村、精市。


いや、ないないない!

私は特に話したこともなければ関わりもなかった、中学で一番人気だったテニス部の部長で、彼がとてもいい人だと称した男を脳裏に思い浮かべ、それを打ち消すようにブンブンと大きく首を横に振った。
間もなく、私は心優しい大人に保護され、無事家に帰ることができた。

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