クリアランス | ナノ




「フィンクスの奴と喧嘩したんだって?女寝取ったらしいじゃねぇか、やるな」
「ウボォー君、それかなり事実が捻じ曲がってるから訂正させてくれ」

ウボォー君の家に酒でも飲もうぜと呼び出されたので、今日は仕事もなかったし二つ返事でオーケーした結果、昼間から度数のキツい無数の酒樽に囲まれながら俺達は浴びるように酒を飲んでいた。
アルコールには網のように強いとはいえ、この飲み方は明日二日酔い必至だ。俺はクロロさんと同じで良いワインをスローペースで傾けてる方が好きなんだけど、ウボォー君に飲もうと誘われた時点でこの事態は予測済みなので特に問題は無い。明日はベッドで唸る覚悟だ。
それはそうと、俺が寝取ったって何だ。人聞きの悪い。

「まずはその話の前に、前提として俺がとてもフィンクスについて怒っていたという話をせねばなるまい」
「へぇ、珍しいな。ファラオって何したらキレるんだ?」
「フィンクスが食べ終わった食器を流しに運んだ後、何度注意しても水をつけない事で俺は常日頃からイライラしていたんだが、先日ついにあの野郎が『もう、一度使ったら捨てて盗ってくりゃいいだろ』などと宣いやがった。冷戦開幕だ」
「ちっちぇえ…」

俺を非難するようなウボォー君の発言に、俺はキッと彼を睨み上げた。
もちろん洗うのは俺がしているが、俺は本当なら流しに運び水を入れた後、さらに洗剤を一滴垂らしておいて欲しいんだ…それを譲歩しての水を入れろ発言だったんだぞ?なのに、食器を流しまでは運ぶのにどうしてただ蛇口を捻り、閉める。そのたった二手間を惜しむのか。理解出来ねぇな。

「お前面倒臭ぇな…で、それで怒って女寝取ったのか?」
「寝取ってはねぇから。俺が怒ってるのにあいつがそわそわ服選んで出掛けやがったから、デートだと踏んで尾行して何食わぬ顔で合流してやったら、相手の姉ちゃんが意図せず俺に一目惚れしてフィンクスが腕振り回し始めたから魑魅魍魎ちゃん達の三百程の尊い犠牲を糧に逃げた」
「ぶはっ!」

ウボォー君が腹を抱えて笑い始めた。
あれには俺も予想外で申し訳なくは思ったんだ。でもフィンクスも悪い。迷った末に血迷って、原色レッドのスカジャンでデート行きやがったあいつが悪い。付き合いの長い俺からすればジャージじゃなかっただけマシか、はたまた威圧感が増したから尚問題か、と熟考する程度のネタだが、デート相手のお姉ちゃんはドン引きで怖がってたから。
このままではまずいと、実は善意でフィンクスの服装を笑いに変えてやろうと特攻した俺は、お姉さんの目に真面目でお洒落な男が颯爽と助けに来たように映ったらしく、見事に三角関係っちゃいました。
俺の反省すべきは、今後フィンクスと合流するかもしれないお出掛けの際にはもう少しダサい格好をしようって所だ。対比って…怖いよな…。

「そっから、どうやって仲直りしたんだよ?」
「まず流しに水を溜めた桶を置くことにした。食べ終わった食器は今はそこに入れている」
「そこじゃねぇよ!そこはどうでもいいんだよ!!」
「フィンクスには女紹介した。後、メンズノン○買ってあげた。あいつに全然似合わないだろうけど、それもまた一興」

ウボォー君が床に笑い転げている。俺はジョッキ一杯のウイスキーを呷った。


「ところで、先日なんだが俺、ヒソカ君とお友達になったよ」
「…………は?!」



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