クリアランス | ナノ




結局、節々にヒソカ君の存在感が成せるコネの力を感じたものの一日で二百階まで到達する事が出来た。
流石にこれは偉業らしく、今は隣にヒソカ君が居ないにも拘らず周りからかなり見られている。だが俺は明日の昼にはそっと消えるから、あまり俺の存在を皆さん気にしないで欲しい。

二百階までのエレベーターを降り、よし約束は守ったぞとヒソカ君を探しフロアを見回したもののあの目立つイケメンの姿は見当たらなかった。代わりに黒髪の活発そうな少年と目が合う。

「あ!」

そして既に下していた無視するという俺の脳内選択肢をキャンセルするように声を上げられる。隣の銀髪の少年に慌てたように殴られていた。あ、やっぱ俺って危険人物認定されてるんだね。いいけど。

「えー、でもあの人は良い人そうだよ?」
「バッカ!ああいう奴に限って裏では悪どいんだよ!ヒソカと一緒に居るような奴なんてそれだけで信用出来ねぇ!」

少年達よ、丸聞こえだ。ま、俺はA級賞金首の弟を持ち、その仲間とも親しく、さらにお手伝いまでしている立場なのでどう考えても悪役なのだが。人なんてぱかぱか殺してるし。
しかし黒髪の方の少年は、俺の何を感じて良い人そうなんて思ってしまったのか。動物勘は鋭そうに見えるのに。

「さすがファラオだね。本当に一日で二百階まで来た
「半分ぐらいお前のせいなんだけどな」

何故か気配を消し絶状態で近づいて後ろから話し掛けて来たヒソカ君に、俺はぶすっと不満顔を作ってやった。お陰とは言わないぞ。
少年達はヒソカ君に気づいていなかったらしく、ぎょっとしたようにヒソカ君を見ていた。その素直な反応、昔のフィンクス達を思い出すなぁ…いや俺も年齢的には皆と変わらないんだけどさ。弟のお友達として見ていたからどうにも未だに子供扱いしてしまう。

「彼等と知り合ったの?」
「は?…え、そこの子供二人?いや全然。むしろヒソカ君知り合いなの?」
「ハンター試験でちょっとね
「へぇ」

何だか機嫌が良さそうだ。ヒソカ君のお気に入り?それって、少年達には悪い意味になるかもしれないが。
しかしヒソカ君はそんな少年達にさえ、もう興味を無くしたかのように視線を外した。気まぐれだよね、ヒソカ君って。

「今日これからボク、試合なんだよね。良かったら見に来てよ。はい、チケット
「良かったらとか言いながら強制っぽいなぁ…ま、行ってもいいけど」

どうせ明日まではヒソカ君に付き合う予定だし、今日も夜美味しい所連れて行ってくれるって約束してるし、とチケットを受け取る。
おかしいな…俺は食いしん坊キャラじゃなかったはずなんだが…クロロさんとかパクちゃんは予定合わない時多いし、今までは何だかんだセーブされていた良いもん食べたいという欲求がヒソカ君により引き出されている気がする。

「そうだ、ファラオ。マチ呼んでおいてくれるかい?」
「…試合で怪我する気満々か。レストランの予約にもう一人追加しておけよ。ヒソカ君と二人ならマチちゃん絶対来ないだろうけど俺も居るなら来てくれるかもしれないし」
「OK

ヒソカ君ってマチちゃんの事好きだよなぁ。マチちゃんはヒソカ君の事大嫌いらしいが。

「じゃ、試合程々に、相手が可哀想にならない程度に頑張れよ」
「うん


その後の試合を見た俺は、奴の言葉は二度と信じるまいと思った。
完全にパフォーマンス試合で負けるとか…可哀想…。ヒソカ君の自分の腕を犠牲にまでしたパフォーマー精神には感心させられたけどさぁ。後、性格診断も面白かった。具現化系について後で詳しく聞いてみたい。

以上の俺の反応と試合感想に、ヒソカ君は嬉しそうにしていた一方、マチちゃんには何故か呆れたように見られてしまった。
ちなみにマチちゃんへのディナーのお誘いは「ヒソカが居るなら無理。ファラオ、また今度ね」とあっさりクールに断られてしまいました。俺はマチちゃんに結構好かれてると思われるのに、やるなヒソカ君…。



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