クリアランス | ナノ




食うもん食ったので、約束通りヒソカ君の案内で天空闘技場に来ました。俺は必要性が無い限り約束を破る事は無い。

「受付面倒だったなぁ…生年月日とか血と汗と涙の戦いに関係ねぇのに」
「ファラオ、今日中には二百階まで上がってね
「二百階?急に条件増やして来たな…それの難易度がわからないんだが、二百階だと何かあるのか?」
「それは来てからのお楽しみ
「ふーん、ま、その方がやる気出るしいいけど」

ちなみに今のヒソカ君はレストランを出てすぐ化粧をした為に、見た目から完全に近づいちゃいけない空気を醸し出している。しかし、あの化粧の手際の良さとみるみる変わる顔には感動するものがあった。女の子相手だとデリカシーの問題で化粧してるところ観察なんて出来ないからさ。結構面白いんだな。
にしても、受付に並んでる奴等見る限り天空闘技場ってそんなレベル高くないのかな?念覚えてる奴でさえ全然居ないし。二百階からが本当の戦いだって感じ?

「それはそうと、お前凄く見られてない?此処でもやらかしてんの?やめてくれよ、俺にまで風評被害が来る」
「一度しか見てないけど、あの小鬼の残虐性見る限りあながち風評被害でもないんじゃないのかい?」
「仕事とプライベートは別なんだよ。今はプライベート」

それに、俺は零か十かで十を選んだだけだし、俺の具現化した魑魅魍魎な小鬼ちゃん達はそんな俺の想いが反映された故に思い切りが良いから少々血肉が飛び散るだけで、そう酷いものでも無いだろう。ちょっと小鬼ちゃん達の容姿が慣れてない奴等には醜悪に映るだけで…。
フィンクスなんかはもう慣れてるから、共闘してる時ペット感覚で新鮮な人間の生肉餌付けしたりしてたぞ。いや、それに関しては俺もどうかと思ったけどよ。

人数が多いからか、受付後も中々名前が呼ばれず手持ち無沙汰だ。ヒソカ君が付き合って隣に居てくれているが、この場では(たぶん悪い意味で)有名人らしいヒソカ君の隣もそれはそれで少々居心地が悪いので早く戦わせて欲しい。
確か百階からが個室もらえるんだよな…その辺になると人数もそんなに多くなくて、すいすい試合出来るんじゃないだろうか。どうにか一度で百階まで飛び級出来ねぇかなぁ…難しいか。あんまりヒソカ君に手札明かしたくもないし。

「2010番・2031番の方、Bのリングへどうぞ」

お、2010番俺だ。やっと呼ばれた。

「頑張ってね
「はいはい」

ヒソカ君からの声援を適当に流し、指定のリングに向かった。

目の前の相手は、図体だけはフラン君並だった。
が、もう念を覚えていないのは置いておいても筋肉の質も歩行動作の素人臭さもそれから俺を雑魚と決めつけているような頭の軽さも…もう、何処からどう見ても完全に弱かった。もしこれを演技でやっているのだとしたら、俺は敬意を表し棄権してやってもいい。

相手の挑発の声と闘技場の簡易説明の声を聞き流し、説明が終わり試合開始の声が響いた瞬間、俺は動いた。

その場でただ脚を前方に突き出す。それだけ。
たったそれだけの、念も何も使っていない風圧のみで対戦相手は吹き飛んだ。0.2秒ってとこかな。場外。俺の勝ち。
対戦相手の後方の席だった観客さん達には、いきなり強風お見舞いしてちょっと悪かったかな。何にせよ、面白みに欠ける試合だった。

「2010番は百階へ行きなさい」
「は?」

俺は審判の発言内容に思わず反論するような声を出してしまった。
確かに試合は相当なスピードで終わったし、強いのも解っただろう。だが天空闘技場だって、そんなほいほいファイトマネーの上がる上階に行かせていられないはず。百階は個室を与えられるってぐらいだし、流石に二回ぐらいは試合こなしてから案内されるものじゃないのか?じゃないと、他の俺の実力がちゃんと計れていない奴等が納得しないだろう。
というか今現在、俺が納得出来ていない。飛び級したかったの確かだがこれは…。説明を求む。

「……今の試合から実力は充分にわかりました。いえ、わかりませんでした故にです。それに二百階闘士ヒソカ選手のお知り合いのようでしたので…き、期待しています」

かつて俺はここまで慄きながら期待していると言われた事はない。というか、それ期待じゃないだろ。階下を下手に荒らされない為だろ。つまり隔離。好都合なはずだがイマイチ釈然としない。
前半も本音は本音なんだろうが……ほぼコネじゃねぇか。この俺のもやっとした気持ちをどうしてくれる。

とりあえず戻ってヒソカ君の脛を蹴飛ばそう。俺が攻撃したところでまた喜ばれかねないのが複雑だが。



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