久々知君と豆腐を間に挟んだ衝撃の初対面を果たした俺ですが、湯飲みに戻ってから気づいてしまった事がある。
着物が、久々に泥とか汗とか以外の汚れ方…豆腐塗れである。いや、豆腐だしそこまで問題な…いように知ってる俺は思うんだよ?でもさ、これ何も知らない伊作さんから見たらさ、見たらさ、白濁とした何かに汚れる脱ぎ捨てられた着物って、さ…。
…ちくしょー!やましい事は何も無いのに何なんだこの罪悪感はっ!でも久々知君とぶつかったのは完全に俺の不注意!
「ただいま、留さん居――」
……い、伊作さんお帰りー!あ、はは!どうしたのそんな、豆腐に塗れてるだけの健全な…健っ全な着物見ながら固まったりなんかしてっ!
伊作さんが襖を開け放したまま、無表情で豆腐に塗れた着物に近づく。俺の心臓は(気分的に)ばくばく。
伊作さんが着物を手に取る。俺は(元々してないけど気分的に)息を止める。
伊作さんが着物に鼻を近づけ――?!
ちょ、伊作さん?!それ、本物じゃないから別に何の問題も無い行為だけど、それがモノホンさんだったらどうするの?!俺とは無関係の変態野郎がした事だったら、ちょっと貴方可愛いんだからもっと自覚っていうか警戒して…っ!
「豆…?あ、豆腐?」
しかし俺の人から借りた着物で淫行したという疑いは晴れたようなので、それは心から良かったと思う。
「もしかして…」
呟いた伊作さんは、着物を床に置くとまた部屋を出て行った。
…出て、行った?
え、待ってよ伊作さん!着物放置ですか?!いや、常時伊作さんに洗わせて着物放置してる俺が言うのもアレだってわかってるけどさ、今この状態の着物放置したらさぁ…?!
「ただい――」
はい、案の上ーッ!帰って来た食満、着物見ながら固まった案の上ーッ!
「っい、伊作!無事か?!」
そしてまた着物放置、しかも襖開け放したまま出て行きやがった!
おい、お前このパターンって…!
「恒希さん、もしくは善法寺先輩居ま…わお」
はい、次綾ちゃん入りましたー!
君いっつもこの部屋に来るわけじゃないよね?!何で今日の今に限って?!
…おい誰かこの負の無限ループを解いてくれ、頼むから。