さて、今日も今日とてノープランで走るか!
と、竹刀片手に爆走した俺が悪かったのか、そうなのか?
丁度曲がり角に差し掛かった時、一瞬人が見えたと思ったら俺の視界を白が覆った。
え、え?
何この俺の顔にかかる白濁とした液体?物体?…だ、駄目だこの表現は何か色々と危険な気がする…!
てか、何で俺の第六感発動しなかったし!
「あ…」
「あ?」
俺が正体不明の白い何か塗れになっていると、目の前でぽつりと声がした。俺は思考を中断して前を見る。
…何故俺は、絶望して泣きそうな表情の五年生に、被害者面で見られているのか。
あれ?構図からして俺にぶっかけたのこの子だよな?君加害者、俺被害者じゃね?あれぇ?
「すみません、飛び出して来たのに驚いて…豆腐、を…豆腐…」
…この物体豆腐かよ、危険性が無いゆえに第六感発動しなかったのかよ、いや発動しろよ、とか色々と言いたい事はあるのだが。あるの、だが。
「…なんか、ごめん」
そんなに大切な豆腐だったのこれ?高級品なの?泣きそうになるぐらい?
俺は混乱して、何故かそれならせっかくだから食べてみようと豆腐塗れの顔で口元の豆腐を拭い一口食べてみた。
「あ、美味…」
予想以上に美味しかった。何これとろける。
そういえば、俺物食べるの前世ぶりじゃん。食べたいと思った事は幾度となくあるが、成る程その相乗効果も相まってこんなにも美味しく感じるわけだな?
「好きなんですか?」
「え?」
「豆腐」
「ああ、好きだな」
美味しいよね。俺は味噌汁の豆腐が一番好きかなー。いや、おでんやすき焼きも捨て難い。
「あ、あのっ!」
俺がどうせ食べられやしないのに美味しい豆腐の食べ方について考えていると、五年の子がどこか興奮したように声を上げた。
「俺、久々知兵助です!」
「は、はいご丁寧に。八代恒希です」
「八代さん!」
「はい」
おい何だこの子の急激なテンションの上昇。お兄さん、思わず口調が敬語になったぞ。
「今度、俺とまたお話してくれませんか?!」
「……うん、学園が平和になったらね」
別に何も用が無ければ、ちょっと話すぐらいは構わない。この子が俺の何をそこまで気に入ったのかまるで理解不能だが。