現在、くのたまの浅実さんと知り合った翌日、俺は食満が部屋でよくわからん小道具の修繕をしているのを見物中。
食満、それは用具倉庫でやれよとか俺が突っ込まないのは、食満があえてそれを部屋でやる理由を俺もそれとなく察しているからだ。

たまに、思い出すことがある。モッチーがこの世界に来る前、伊作さんが当たり前の幸せの中で笑っていた時の記憶。

俺は天女騒動が起こるまで、伊作さんの友人である忍たま六年生達にはむしろ好意を持っていた。

食満は伊作さんの同室であり、良き理解者。いつも一緒にいるせいか、伊作さんに巻き込まれてよく怪我してたよな。なのに、伊作さんと離れようなんて微塵も思ってなかった。笑っていつも許してた。喧嘩早くて子ども好きの伊作さんの大切な友人。
立花はサラスト一位の天才美人な女王様。立花にからかわれて真っ赤になる伊作さんはそれはそれは可愛かった。立花のからかい方は、気に入ってる奴と気に入らない奴の差がわかりやすい。何だかんだで頼りがいのある司令塔な、伊作さんの大切な友人。
潮江は他人に厳しく自分にもっと厳しい秀才鍛練バカ。伊作さんに穴に落ちるのは注意力が足りないからだなんて怒鳴っていて苛ついたけど、あれで友を想うゆえの言葉なんだよなぁ。不器用め。曲がったことが嫌いな、伊作さんの大切な友人。
七松は無邪気で明るい暴君。伊作さんは不運により七松関連でよく怪我をしていたが、あれにしゅんとしながら謝られたらなんか許したくなる不思議。暴君のくせに、何だかんだ皆がアイツに付いて行くんだよなぁ。いつも笑顔で先頭を行く、伊作さんの大切な友人。
中在家は声が小さくて冷静で大人。最初は俺、全然中在家の声聞き取れなくて、でも伊作さんがよくお礼言ってたから何話してるのか気になって、いざ聞こえるようになったら凄く優しい奴だってわかった。後輩に慕われている、伊作さんの大切な友人。

過程の話だが、もし逆ハー補正なんて無くて、伊作さんにアイツ等が刃を向けた事実が無かったら…俺は、アイツ等を好きだろう。
まぁ、伊作さんに刃を向けた事実がある以上、俺は揺るぎなくアイツ等が大嫌いなんだがな。

だって、モッチーは明らかに被害者で、伊作さんなんて言うまでもなく被害者で、…現時点で加害者はアイツ等以外、成り得ないだろう?
伊作さんが殺されかけて、泣いて…なのに誰も悪くないなんて綺麗事、俺は絶対に思いたくない。

「はぁ…終わった」

委員会の仕事はなるべく部屋に持ち込み、伊作さんに違和感を持たせない程度に一緒に居る時間…護れる時間を増やした食満が、額の汗を拭いながら呟く。

こんな姿いっつも見せられたらさ…普通の奴なら許すよな。
でも、俺はどうしても、伊作さんが死ぬかもしれないって思ったら――



あれ、何だ?視界が、アか、イ…?

「ただいまー」
「おう、おかえり」

部屋に帰ってきた伊作さんの声を頼りに、動揺しながらその方向を見る。
瞬間、視界は正常に戻った。

俺は、今起こった現象をいつものように何なのかとか考えはしなかった。考えようと思えなかった。
まだきっと、早い。思い出すには――いたい。


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