(※微妙にネタバレ)
(何この学園超怖いの続編)


八代恒希、20云歳。女性だけ年齢を明かさない世の中が許せないので、歳聞かれたら毎回こう答えている。
つまりはそんな愉快な男である俺は、なんか幼い頃から漠然とあった教師になるという夢を叶えるべく、ただ今大川学園高等部にてゆるく教育実習生やってまーす。


「八代先生、こんにちは。あの…これクッキー作ったので…受け取ってもらえませんか…?」

ちら。上目遣いちらちら。
いやね、これ言ったら友達に負け犬パンチされそうなんだけど、普通に俺今までそれなりにモテてきたからさ、ないことじゃないよ?教育実習世イケメン=モテモテは世の常なのです。
でもかわいい子にあからさまに好意あります!な対応されると俺も男なので嬉しい。
そんな彼女の名前は望月夕美ちゃん。三年三組で学年一かわいい子らしい。

「恒希さん」

にっこり。
そんな笑顔を携えながら現れた、かわかっこいい系美少年。
名前を善法寺伊作君という。なんか彼は俺を知り合いか何かと間違えているらしく、俺は正直ちょっと対応に困っている。
いや、善法寺君はましな方なんだけどさ…マジ七松とか、お久しぶりです!あの時はすみませんお世話になりましたー!――と、叫びながらまさかの特攻仕掛けてきたからな。俺のそっくりさんどんだけ強度あったんだよっていう。

「だいたい望月さん彼氏居るでしょ?恒希さんに近づかないでもらえる?」
「善法寺君と違って別に今更彼女になりたいなんて言わないよ。彼氏とは別に教育実習の先生に憧れるなんて此方の世界じゃ普通の話なの」
「それでも彼氏はいい気分しないんじゃないの?」
「残念ながら、あの子も恒希さんにはお世話になっていたので、今ではすっかり彼になついてます」

なんて思考飛ばしてる間に、目の前で繰り広げられる喧嘩する程仲が良いの図。
へー、望月さんって彼氏居たんだ。


…うん、それ以外の会話は怖いから俺スルーするね。

「二人とも、もう授業始まるから教室戻りなさい」

やばい、今の俺先生っぽかった。テンション上がる。

「はい。あ、八代先生、次の授業何年何組ですか?」
「え?あー、二年二組」

望月さんの質問に答え、それにより俺は今からあのクラスに授業に行くのだと実感してせっかく上がったテンションが落ちていく。
…いや、悪い子達じゃないのはわかってんだよ?この学園の子達、皆本当に良い子。

なんだけど――初対面でスライディング土下座のインパクトは中々忘れられないというか。しかも連帯責任とか言ってその子の双子の片割れも頭下げてくるし、髪ボサボサな男前君もボロボロ泣きながら一緒に土下座してくるし…。
二年二組、ちょっとカオス過ぎて付いてけないです。

「…鉢屋には気を付けてくださいね」
「鉢屋…?」
「馬鹿、善法寺君。今は不破でしょ。不破三郎のことです」
「ああ…」

スライディング土下座の不破君の方ね。気を付けるって何を気を付ければいいか知らんが了解した。

「お前等、あんま八代先生に迷惑かけんなよ」
「「留さん/食満君!」」

お待ちしておりました、俺の救世主。
現在時刻、予礼二分前。その二人早く連れてってあげてよろしく。

「ほら、早く行くぞ」
「「はーい」」

やっぱりこの二人本当は仲良いだろ、と微笑ましく見守りつつ、俺を助けて颯爽と去ろうする食満の背中に俺は笑顔で声を掛ける。

「食満、ありがとな」
「…はい」

何で食満は俺がちょっと優しい言葉かけると慣れないみたいな反応するんだろ。
まるで俺が食満に優しいのがおかしいと言わんばかりではないか。


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