えー俺は前々からそれとなく思っていたんですが…あ、いやまずは挨拶だ。
こんにちは、今日も今日とて湯飲みです。今日は人間になれる日なんだが外が初めての雨です。別にまったく支障はないんだけどなっ!

でだ。
俺が沸々と思っていた事なんだが。

もうね、何でもいいから今日こそささっと潮江に会いに行こうと思うわけだよ。アイツ一人にどれだけ時間かけなならんのだと。
そんなわけで時間省略!すっ飛ばして現在潮江を縄でこれでもかと縛りかつ口を布で塞いだ状態で潮江の前に仁王立ちしながらお送りしております。

え、何?突然すぎる?…気のせいだ!

「立花、協力どうもな」
「頼んだのは私ですから。では、私は黙って見学していますのでお願いします」
「ああ」

潮江を引っ捕らえるのに協力してもらった立花に一応礼だけを済ませ、俺は縄に縛られ圧倒的不利な状況下において尚、生意気にも俺を睨んでいる潮江に目をやった。
…うん、俺を睨むこの姿、まさに俺の知る潮江だ。だからこそより強く感じる。
そう、俺は潮江と話すことがあれば一言言いたかった。


「お前さぁ、なんかキャラ違くね?」

それは心からの、疑問と言うよりは不満。視界の隅で立花から送られてくる視線に、俺は素で話していたことに気づき、要約と補足の言葉を続ける。

「あ、カタカナわかんないか。性格とか信念とか…他の奴等もそりゃそうなんだけど、お前がモッチーにへらへら好きとか言ってんのは、キャラ崩壊にも程があるだろ」

あ、またうっかりカタカナ使っちゃった。まぁいっか。口答えする口は塞いでるし、俺時間無いし、一方的で悪いが俺が言いたいことだけ言い募らせてもらう。
俺はずっと思っていた。あまりにも俺の知る潮江とモッチーに恋する潮江が違いすぎる。それはつまりきっと――

「お前さ、だから苦しいんだろ?自分の今までの信念との矛盾に、心が追いつかないんだろ?」

立花も、最悪だと言ったそれ。
立花はまだ昔に話を聞いていた限り、色の忍務が多い為に多少なりとも気持ち的にましだったはずだ。

「潮江文次郎…俺は個人的に、お前にはこれ以上あまり力を貸したくない。お前を嫌いだからじゃなくて…潮江には、自分で取り戻してもらいたい」

今日、俺は潮江と話した。きっかけは与えたはずだ。それがどんなに大変な事でも、俺がおんぶ抱っこで逆ハー補正を解いちゃったら、コイツもう自分責めて切腹しちゃいそうじゃん?
そんなんなったら、伊作さん悲しむだろ。これ以上伊作さん泣かせんの、俺が許すとでも?

…さてと、何はともあれ、

「時間だ。今日は帰るわ、じゃあな立花…潮江も」
「はい、ありがとうございました」

勝手にべらべら喋って、しかも潮江を助けるのを半ば拒否するようなことを言った俺に、立花は責めることもせず頭を下げた。
俺は最後まで自分の言葉に対する潮江の反応を確認もせずに部屋を出た。


あー、シリアス疲れた。今回20秒も時間余ったな。小走りぐらいで帰ろ。

何で、俺は潮江にこんなに肩入れしてんだろう。
立花に頼まれたから?団蔵君と約束したから?

違う。
潮江の苦しむ姿を見て、矛盾するから苦しくて、切なくて、忘れたくなかったのに気付けばそれは無くなって、上書きされて。



きっと、それは今の俺と同じだから。



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