あー団子美味そう。羨まー。
組頭さんは俺のテレパシーが通じたのか元々の知識か、はたまた偶然か、無事森松屋にてお団子を食べていた。
てか、食べてる時でも包帯外さないんだな。包帯にみたらしがつきそうでつかない、無駄に凄いテクニックだ。

「湯飲みねぇ…」

そして吟味するように俺を見るその片目に居たたまれない。

「高そうだけど…あ、ヒビ」

その小さなヒビは欠陥ではなく、七松の野郎から伊作さんを護った名誉の勲章です。

「本当に団子食べてるし…」

やぁ、尊奈門君。遅かったね?
白けた目で組頭さんを見る尊奈門君を俺は微笑ましい目で見つつ、そんな和やかな空気さえ許さないような町の雰囲気にため息を吐きたい。
この町、何でこんな危険区域なんですか?…まぁ、忍術学園に最も近い時点で危険なのに、今までそう物騒な噂を聞かなかった理由も忍術学園で色々守ってきてたからなんだろうなぁ。
今の学園、町まで気を遣う余裕無いもんな。

「…あの、組頭」
「うん。でもそれよりも、不自然だなぁ…」

お、さすが組頭さん。気が合いますね。
尊奈門君は何のことだと不思議そうにしつつも、周りを警戒するように脇差しを握る。
最近、湯飲みの神様にもらった力に慣れてきたせいか、俺は人の気配に敏感だ。
尊奈門君もだけど、組頭さんは相当強い。それをわざわざ狙うぐらいなんだから、チンピラじゃあるまいし相手もある程度は力に自信があるはず。てか、第六感から相手もかなり強いのわかるし。

それなのに、気配があからさますぎる。油断させる為か…?
でも…これじゃまるで、気づいて欲しいみたいだ。

「尊奈門、先帰る?」
「ご冗談を」

尊奈門君が脇差しを抜いた瞬間、視界を黒が過った。
うん、これじゃあ死なない。死なないが怪我するな。なら、


「ヒーロー参上。悪いが借りは返す主義なんだ」

人間になるや否や尊奈門君の前に跳んでいき、手裏剣を人差し指と中指で挟み止めた。
もう俺、痛いキャラでいいよ。自らヒーローヒーロー言っちゃう。

「あれ、八代君時間無いんじゃなかったの?」
「無理矢理作りました」

きょとんと俺を見る組頭さんに矛盾を突っ込まれたが、俺はおどけたように肩を竦めてみせた。
こっちの変身、切羽詰まって無きゃ出来ないですから。裏事情。

「組頭、この人誰ですか…」
「まぁ、敵じゃないよ。恩返しって言ってるし。八代君についてはこの人達追い払ってからね」

言うや否や、猛スピードで組頭さんは刺客達を倒していく。俺はその身のこなしを今後の参考にしようと気にしながらも戦い、最後の一人の背中を思いきり踏みつけた。
この間、50秒ちょっきり。いやぁ…組頭さん強いな、神様パワー使ってずるしてる俺と同じ量を同じ時間で倒すって。

「強っ…」
「いや、君んとこの組頭さんも相当だよ。俺が今まで見てきた中で一番強い」

まぁ、俺が見てきた範囲って相当狭いけど。
さて、恩返し終了かなと思った直後、気配もなく腕を掴まれた。生き残りかと瞬時に肘鉄を喰らわせようとしたが、上半身を後ろに逸らしかわされ――って、組頭さんじゃないですか。

「すみません、でも気配消さないでください」
「んー、逃げないようにね。忍術学園で今起こってることと、君について教えてもらえる?」

笑顔で圧力かけられた。これ、イエスオアはいじゃないか。…断る理由もないけど。

「まぁ、時間切れになるまでなら。忍術学園って言ったら、モッチー…望月さんに関する天女騒ぎで間違いありませんか?」
「うん、君も相当関わってるって噂で聞いたけど」

噂、ね。怖いな、忍術学園のほぼ全ての忍たまを意図せず虜にし、しかも忍たまが弱くなっている今、あまり流れると学園が攻められる。俺の制限時間は一分間。護りきれるわけがない。

「…先に言っておきますけど、俺の話は他の誰から聞いた話とも違うと思いますよ」
「私も忍者だからね、誰の話も真っ向から信じはしないよ。いいから話してみて」

それは…何と言うか、忍として正しいんでしょうけど、ちょっと寂しいな。
まぁ、いいか。俺は真実話すだけなんだし。

「そうですね…ある日突然やって来た天女様が、本人含め誰もが望まない力によって忍者学園のほぼ全生徒を虜にした…ってとこですかね」
「幻術?」
「違いますが似たようなもんです」

他に説明のしようがないし、幻術がたぶん一番近いんだろう。

「よくわかりませんが、天女って女が望んでいない根拠は?」
「俺がそう思うから。真実見極める目には自信あるよ」

尊奈門君の問いに、俺は根拠も何もない事を自信満々に言った。

「ふーん、まぁ話はわかったよ。時間無いならもう行っていいよ」
「ありがとうございます。…あ、簡単な事なんで一つお願いしていいですか?」
「何?」

俺は、組頭さんが俺に用が無くなった以上、念のためのお願いを口に出す。

「湯飲みと着物、伊作君に返すのお願いします」

言い終わったと同時に俺は湯飲みに戻った。…あ、危ねぇ。
俺、帰り道もわかんないんだよ!お願いしますよ、お願いしたからね本当!



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