団蔵君に大見得切ったはいいけど何をすればいいか皆目見当がつかない。
今日俺に注がれている茶葉はふわっと林檎の香りがして、そんな俺の焦燥する心を癒してくれます。自動アロマ的な。今の俺からはアップリーな香りがするぞ!どや!

「それ高いやつだから祝い事の時しか淹れないんじゃなかったか?」
「これでも飲まないとやってられなくて」

そんな、酒みたいな。
…思わずつっこんでしまったが、要は今の俺と同じく伊作さんも癒されたかったのだろう。それぐらい、なんか見るからに伊作さんが疲れきっている。
いつしか伊作さんが避けようもない不運から激流の川に流され、三日かけてボロボロになりながらも命からがら学園に帰ってきたらしい時と同じようなオーラを出している。

「それに、委員会しないのは皆だからいいとして…しばらく伏木蔵のこと見てないから、ちょっと心配なんだよね」
「…それなら、俺もしばらく平太を見てねぇな」

えっと、確かその二人は委員会の後輩だっけ?…補足を!誰か俺に補足説明をお願いします!

「ちょっと気に留めておこうか」
「そうだな」

あ、話終わった。俺が理解する前に二人で何か通じ合ってる。

…やっぱり伊作さん好きなの、食満なのかな?今まで、少なくとも部屋の中ではそういう雰囲気になったことない気がするんだが。なんか、二人で話してる時の落ち着いてる印象と、伊作さんが好きな人の話する時のどきまぎ感が結びつかないんだよなぁ。
んー…食満じゃないのか?となると…あ、俺の知らない人か。毎回部屋の外で会ってるなら俺には知りようがないし。
困ったな、それだとそいつが本当に信用に足り得る人物かわからんぞ。食満は…俺は嫌いだが、まだ許せるんだ。いや伊作さん裏切ったことは来世まで許さんが、恋愛はまだ…許せる。だけど俺がまったく知らない相手となると、ちょっとこれは不安だな。

「恒希さんはいるか?」
「仙蔵、お前目上への態度は完璧なくせに何でそうなんだよ」

ちなみに今起こったことは立花がいきなり襖開けて、それと同時に用件だけ伝えてきた、というものだ。
てか、また俺を捜してたのか。潮江の件だろうか?うむ、なんかちょっと申し訳ないな。

「僕、もう一ヶ月以上恒希さんに会ってないな…」

え?

…あ、ああ、いつも俺が一方的に見てるだけだったか。あれ、何か今の俺の一言ストーカーっぽい。…それはともかく、最後ちゃんと人間として伊作さんと顔合わせたのは…ああ、七松の時か。思い出したら腹立ってきた。

「そんなに会ってないのか?」
「え、仙蔵は会ってるの?」
「つい一週間前にな」

…立花さん?いや、事実だけど。だけれども…!
ほら、何か微妙な空気になってんじゃん!気まずい空気流れてるじゃねぇか!

「…何したの?」
「部屋の手配の礼をしてもらっているところだ。その件で話があると、もし会ったら伝えてくれ」
「お礼って何?」
「さぁな」

立花ぁあああ!何でそこで妖しく笑った?!別に潮江の話は隠すことじゃ――お前、あれか…!潮江助けるように頼んだとか恥ずかしいから誤魔化したんだろうっ!
そういうツンデレ的な理由ゆえにだと思うと、悔しいが何か責められない…っ!

「…僕も、恒希さんに会いたいのに」

伊作さんが俯きがちに寂しそうに呟いた。

八代恒希の胸に百万のときめき。

八代恒希は悶えた。


…唐突にクリティカル攻撃を喰らった。伊作さんかわいいよ伊作さんもう伊作さん伊作さん。
潮江の件が終わったら一番に会いに行く。もう変身三回分ぐらい一緒にいてもいいんじゃないか?許されるんじゃないか?てか許されるよ!

「まぁ、もし会ったら頼んだぞ」

そういえば、潮江の件まず俺はどうしたらいいのかが解決した。次は立花のとこ行けばいいんだな?オーケイ、任せろ。



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