外に割れ物を放置するのは危険です、皆さん気を付けましょう。てか、お願いだから気をつけてあげてください(全割れ物代表、八代恒希より)


えーと…まず現状説明するに辺り、一つ報告を。
右腕にくない刺さったせいか、湯飲みの右半身に微かなヒビが入っております。…モウ、オレケガシナイ。

まぁそれは置いといて、俺が外に放置されてから(自分から外に出たのだが)30分経ったか、一時間経ったか…俺はこの時間内だけで既に三度は命の危機を感じた。
もう強風でもさらにヒビ入るんじゃねぇかってビクビクしていたし、野良猫か忍猫かは知らんが猫が視界に入ったときは心の中で遺書書いたし、明らかに毒持ってますな色と模様の蛇が俺の周りをくねくねした時は魂を飛ばした。
考えてもみろ、自分より数倍の大きさを持つ圧倒的強者が近くにいるのはわかっているのに逃げられない俺の恐怖…あ、もう忘れよ。また怖くなってきた。俺、これからは雑草に優しく生きていこう。

俺が雑草に対して奇妙な親近感を芽生えさせていた時、俺の身体すれすれに何か白い物体が落ちてきた。

冷や汗が頬をつたう(ような気になる)


ぎゃあぁああああ!何この白…トイレットペーパーぁぁあああ?!
今の俺の耐久力、トイレットペーパー>>>>|越えられない壁|>>俺、状態なんだよ!ちょっと誰だよトイレットペーパー投げてきたの?!気をつけろマジで…!

「痛たたたた…」

聞こえてきた声はまだ変声期前の少年の声だった。
ちっ…子どもか。トイレットペーパーが影になって見えないが、台詞から察するにきっと転んだ拍子にトイレットペーパーを散らかしたんだろう。子どもなら仕方ない。許そう。子どもだからって俺への殺人(?)未遂を許すなんて、俺って優しいよなぁ、ははは。

「あ…またやっちゃった」

立ち上がった少年にほぼ反射的に装束の色を確認する。三年か…最近何やら三年と縁があるな。
それにしても今の言葉、この子こういうことよくあるの?何それ可哀想。もしかして不運か?まるで伊作さんみたいだ。


…あれ、もしかしてこの子、保健委員?

いやいや、別に俺は不運=保健委員と決めつけたわけではなく、だって大量のトイレットペーパー持ってたし、トイレットペーパー代えるのって保健委員の仕事だよな?だから違うんです、伊作さん…!保健委員だっていつかは不運じゃなくなれるよきっと!

俺が意味のない弁解に必死でいる間、おそらく保健委員な少年は大量のトイレットペーパーを抱えながら俺の近く、もとい俺の隣に落ちている最後の一つのトイレットペーパーの近くまで歩いてきた。
そこで初めてトイレットペーパーの影となっていた俺が目に入ったらしい少年は、ぱちぱちと瞬きした。

「外に、湯飲み…?」

至極当然な疑問の言葉に、俺はですよねーと賛同する。湯飲みは外に置くものではありません。
それから少年はトイレットペーパーを地面に置いて、俺に手を伸ばした――と思ったら、顔を歪めて手を引っ込めた。え、何その顔。

無言の見つめ合いをしていると、また新しい三年生の誰かが此方に歩いてきた。その肩には見覚えのある蛇。蛇使い…?とりあえず、その子怖いので俺に近づけないでね。

「数馬、何してるの」
「湯飲みが…あったから」
「湯飲み?」

保健委員の子は数馬君と言うらしい。
蛇使い君に注目され、俺は何やら居たたまれない気持ちになる。えっと、あの、何かこんな所に湯飲みがいてすみません。

「誰かのじゃない?先生にでも届ければ?」
「…それ、気持ち悪いから触りたくない」

非常に優しい提案をしてくれた蛇使い君にいい奴認定をしてきらきらとした視線を送っていると、数馬君に蔑んだ目を向けられた。
知らない子どもに気持ち悪いって言われた…っ!俺のハートに大打撃!酷い!何この子、酷い!

「じゃあ壊せば?」

いやぁあああああ…っ!!何、こっちの子は怖い!やめて、殺さないで!許して!蛇使い君の馬鹿!上げて落とす高等テクニックなんていらねぇよ…!

「壊したくは、ない」
「我が侭」
「孫兵、それどっかやってよ」
「どっかって?」
「どっかはどっか!」

言うだけ言ってぷいと顔を背けると、数馬君は大量のトイレットペーパーをまた抱えて走って行ってしまった。思春期の子の気持ちはよくわからんね。
孫兵君?と俺は、顔を見合わせる。

「変な湯飲み」

グサッ!グサッ!
俺の心にまた何かが刺さった。怖いよ、三年生怖いよ。

孫兵君は俺を片手で掴むと、行こうかジュンコ、と肩にいる蛇の頭をもう片手で撫で、歩き出した。え。俺、何処に連れていかれるの?
俺を持ってマイペースに歩く孫兵君に戸惑いながら彼を見ると、ジュンコちゃんというらしい蛇と目が合った。


…誰か助けてー!



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