結局モッチーの部屋で着替えの時とかは目を瞑りつつ一週間を過ごした俺だったが、色んなことにもやもやしていて逆ハー補正の解き方を考えるのを忘れていました。
うわぁ…俺駄目な子。忙しさにかまけてやるべきことやれてないとか、駄目な子の典型。
「…何してるんですか?」
「とりあえず握手」
立花の部屋にて、綾ちゃんと一緒に勝手にお邪魔した俺は、結局綾ちゃんにしたことを思い当たる限り全部してみる作戦に出ていた。
ちなみにその間立花は縛らせてもらっている。今更だが立花の同室者って誰だろう。今帰って来られたら俺完全に悪役だよなぁ。今やってることこそただの握手だけど。
「お前は…何なんだ?」
「何?うーん…難しい質問するなぁ」
眉を寄せていながらもそれはそれは綺麗な顔をした立花に美形的な意味で若干気圧される。だけどそれを悟られるのは色んな意味で悔しいため、握手していた手を離し、立花のしてきた質問の方に意識を集中させた。
一番手っ取り早くて本質を突いてるのは湯飲みです、なんだが信じてもらえないだろうし伊作さんにさえまだ言ってないのに立花に話すのもなぁ…。
「ヒーロー?」
「…」
…ごめん、ふざけすぎました。調子に乗った俺が悪かったから、真顔かつ無言で凝視するのやめて。居たたまれない。
「なら、天女は何だ?魔王か?」
「いや、あの子は普通の女の子…って、立花正気に戻ったのか?」
モッチーを様付けで呼ばない上に魔王呼ばわりした立花にはっとなる。
そういえば、さっき立花が口を開いた時から逆ハー補正にかかっていた時とは少し違った気がする。
でも解けたとして、何で解けたんだ?握手したから?
「…貴方と話しているうちに段々と。今まで自分がしてきたことが夢のようです」
「へー…マジで戻ったんだ」
逆ハー補正を解く方法は曖昧だが、本当に俺が影響しているらしいことに自分で驚きまじまじと立花を見た。見返してくる立花の視線には、最初のように敵意は感じられない。
「それでヒーロー、あの幻術のような天女の力は何なんですか?」
「八代恒希だ、さっきのは忘れろ。俺にも詳しいことはわからない。ただ、天女のモッチ…望月さんはそれを望んでいないし、勝手に発動するらしい」
久しぶりの真面目モードな話に、俺は表情を引き締め立花の質問に答える。
ちなみに綾ちゃんはさっきから何やらきらきらした目でじっと俺を見ている。…あえて俺はスルーします。
「では、ヒーローと学園との関係は?」
「マジでやめろ。関係は…秘密だ。疑うなら勝手に疑えよ」
「そうか、わかった」
そういえば、立花ってい組だっけ?確かい組は頭で考えてから行動派的なそんな集まりだったよな。
あー…本来はコイツ、学園内でも相当忍者に近い忍たまなのか。学園との関係とか、俺初めて聞かれたし。
またもやもやしてきた。俺そろそろストレスで七松につけられた湯飲みボディのひび広がりそう。
「…俺もう時間ないから帰るな。じゃあまたな、綾ちゃん。…と、立花」
もう少し時間はあるけど、もやもやしている俺は早めに帰ります。モッチーの部屋、六年長屋どころかくのたま敷地内だから結構遠いしね。
俺は綾ちゃんとついでに立花に軽く手を振った。
「ああ、ではまた。ヒーロー」
「また会いましょうね、ヒーローな恒希さん」
…あの、本当にその呼び方若気の至りっていうか、恥ずかしいからやめてください。