「ふふ…ふふ、ふ…っ」

部屋の中に響く押し殺した笑い声。
まるで悪役みたい。私は悪者を倒す正義の女の子なのにね。

此処に来てからというもの、綿密に下準備を重ねながらいつ壊してあげようかって、ずーっとうずうずしてた。それが愉しみで、だけどまだ、まだよって、もどかしくて仕方なかった。
私は強いわ。努力したもの。汚いアナタとは違うの。正当に好かれてる。
急ぎたくなる心抑えて、計画通りにキングの駒を追い詰めて追い詰めて追い詰めて追い詰めて、アナタの手駒、もうすかすかね。

バケツをひっくり返したような雨。こんな日に、また見たいわ。あの日は晴れていたから同じじゃつまらないでしょう…?
さぁ、会いに行こう。
私の永遠に一番大嫌いなアナタに。


彼女は事務室の掃除をしていると聞いて来たのだけど、事務室から出て来た彼女は、折良く仕事も終わり部屋に帰るところらしい。相変わらず神様は私の味方だ。
私は彼女から横に人一人分距離をとって、真っ直ぐに歩き出す。同じ廊下。

すれ違う、淡い桃色の私は愛される為に此処に居るのとでも言っているような着物の、黒髪を地味な渋茶の結い紐で二つ結びにした、女の子。相変わらずアナタって顔だけは可愛い。

彼女が足を止める。
空気から狼狽と怯えが伝わって来て、ああ面白い。愉快。うざい。

彼女が勢い良く振り返るのと同時に、私は余裕の笑みで同じく振り返った。

「久しぶりね、望月さん」
「…浅実、さん?うそ、何で此処に…!」

決まってるでしょ?前世のあれぐらいじゃ足りない。足りないのよ。

アンタにもっと絶望してもらう為。


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