俺はめっきりべっこり落ち込んでいた。それはもう、今までにないぐらいの異常な身体の痛みなんて気にならないぐらいにブルーハートだ。
モッチーを盲目に信仰してる奴等の嫌がらせだと思ってるらしい食満が、俺の壊した襖を直してくれていた。襖…ちょっと外れたとかじゃないからな。軽く木片散らばっちゃったからな。
あぁあああ!俺の馬鹿!馬鹿力!ちくしょー!食満が用具委員長で心から良かったです!今後少し態度改めます!
「留さん直りそう?」
「ああ、10分もかかんねぇよ」
10分だと?!…食満さん、パネェっす。え、屋根の修理やらいつしか七松に大破された長屋の修繕に比べりゃ造作もない?……貰い不運、恐るべし。
それはさておき、俺は先日の一件について思い返した。モッチーと伊作さんと食満と話していていて思ったこと…
10秒前行動しましょう!
じゃなくて!いや、それは物凄く思うけど!何かこんな心の中のやり取り(?)前にもやった!
モッチーと伊作さんの仲に関してだ。伊作さん、食満とモッチーはあの後和解したらしい。それはいい。俺の狙い通りの素晴らしい流れだ。だが――
本当に10分足らずで襖を直してみせた食満が、俺の置かれているテーブルに伊作さんと向かい合わせに座る。
「にしても天女、いや望月さんが味方でよかったな。油断はできないとはいえ、心強い」
「…そうだね」
伊作さん、笑顔が怖いです。
そう、伊作さんとモッチーは和解したものの、何だか知らないが前より一触即発の空気を纏っている。俺のいない間に何があった。
ところで関係ないが、モッチーの名字望月だったな。真面目な話の時にモッチーモッチー言ってるのは緊張感ないし違和感だったが、本名思い出せなかったんだよなぁ。
「伊作、確かにお前はあの人に助けられたし、今回望月さんの真意も知れた。だがあの人が俺達の味方だという保証は何もない」
んー…俺の話?まぁ確かに、今回に限っては俺も食満に同意かなぁ。伊作さんは人を簡単に信用しすぎ。
今の俺は真実化物並に強いし、伊作さん達を絆して徐々に学園を乗っ取ろうとしてる…の方が正直、俺実は伊作さんの湯飲みなんだよっ!より信憑性がある。我ながら湯飲みとか下手くそ過ぎる嘘にしか聞こえない。
「命助けられてるんだよ?感謝するのは当たり前だし、それに…」
「それに?」
「前に文献で見た、ヒーローそのものっていうか…か、格好いいじゃない!」
え。
伊作さんは顔を真っ赤にして食満に訴える。食満は戸惑ったように伊作さんを見ている。
おいお前食満今すぐその場所代われ俺が抱きしめる。伊作さんがかわいいぃいい!ヒーロー?!俺そんな大層なもんじゃないよ!てか伊作さんに格好いいって!伊作さんが格好いいって!
「あのな、伊作…だがあの殺気はプロの中でも、」
「警戒したところで意味ないでしょ?だってあの人、僕達以外の六年生と鉢屋達が一斉にかかったのに、片手間で倒したんだよ?あの実力なら学園なんて今すぐ掌握できるよ」
「一理ある、か」
いや、無理です。俺の制限時間、常に一分だから。
「お前、まさか…ま、まぁそれはいい。それより望月さんだ」
「狡いよね。いつの間に名前なんて教えてもらって…しかもモッチーなんて呼ばれてるし!」
「伊作、なんか俺疲れてきた」
結局、食満が伊作さんに一週間後に会う時にでも、名前で呼んでくれるよう頼めばいいだろう!ということで話は纏まった。
おい待て、俺が伊作さんを伊さ、いいい伊作?と、とか!名前呼び捨てできると思ってんのか?!俺の立場考えろ!無理だ!いっそ伊作様とかの方がよっぽど呼びやすいわ!
そんな俺の悪態なんて気づくはずもなく、伊作さんと食満は夜になったため、布団を敷いて寝てしまった。
まさか…あまりに俺が食満への態度が悪いから怒ってんのか?!腹いせか?!
……反省しよう。