ヒソカとの会話も一段落し、そういえば私が眠っている間に何人ぐらい来たのかと辺りを見回す手間さえ渋りヒソカの胸についた番号札を見た。
…44って。狙ったの?似合いすぎでしょ。何にせよまだまだ時間はありそうだ。

「ヒソカと居ると目立つから、私向こうで寝直す」
「釣れないなぁ
「嬉しそうに言うな変態」

キッと睨んでヒソカから距離を取った。ヒソカを見上げて話していたせいでどことなく浅くなったフードをまた深くかぶり直す。私の身長が低いんじゃない。アイツが高いのが悪い。
ヒソカから離れて座り、さてヒソカが居る限り浅い眠りになるだろうけど寝よう、と膝を抱えその膝に顔を埋めてから三十秒も経たないうちに素人臭い気配が近寄って来た。仕方ないので声を掛けられる前に嫌々ながら顔を上げるという偉そうな態度で相手の男を見る。

「何?」
「!…ああ、気付いてたのか!さっきアンタと話してたアイツ、去年試験官殺して失格になった奴だ。気を付けた方がいいぜ」
「縁切れるもんならとっくに切ってるけど…どーも」

アイツそんな事してたのか。やった事自体はヒソカだし納得するけど、去年落ちたのに今年も受けたのか。どうせ面白半分なんだろうな。

「自己紹介が遅れたが、オレの名前はトンパ。今まで三十五回ハンター試験を受けてるベテランだ!よろしくな!」
「…ブルーです、どーも」

なんか怪しかったので仕事名の方を言っておいた。むしろヒソカに本名教えたくないし試験中はブルーで通そうかな。イルミ君も受けるってヒソカが言ってたけど、イルミ君は口止めしたら聞いてくれそうな気がする。
三十五回も試験を受けたという目の前の中年の男を、で?まだ何かあるんですか?と隠しもせず胡散臭げに見た。

「だ、だから試験について何か聞きたい事あったら教えてあげられるぞ?」
「もうだいたい知ってるから大丈夫です、どーも」

語尾がどーもになって来た。もうどっか行ってくれないかな?知らない人と話すの神経使うから嫌なんだけど。

「まぁ、お近づきの印にこれやるよ。じゃあな!」

ピリピリした私の空気に当てられてか、逃げるように男は去って行った。そういえば名前を言ってた気もする。聞いてなかった。
とりあえず押し付けられるようにもらった怪しさは1百パーセントなのに果汁は百パーセントじゃないオレンジジュースに舌打ちした。私はフルーツジュースは果汁百パーセント以外認めていない。ゴミを押し付けられたようなものだ。どうしようヒソカにあげようかな…でも変に喜ばれそうで嫌だな。

「暇を潰すのは苦手なんだけどな」

自分の言ったその心からの言葉に何故かざわざわと胸が騒いだけど、きっと気のせい。だって何も思い当たる経験も記憶もこの身には何も無い。



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