忘れるはずもないわかりやすい気持ち悪いオーラ以前にその全身から醸し出される雰囲気。私は鳥肌を立てながら強制的に起こされる事となった。
奴の前で無防備に転がっているなんて流石に出来ないので、寝起きでも仕方なくすぐ立ち上がる。
「あれ、ブルーちゃん
ブルーちゃんもハンター試験受けに来てたんだね
」
「ちゃんはやめろ」
真っ青なパーカーのフードを深く被り直し、悪態をつく。そんな態度でも相手は変態だから何も問題は無い。
私とこのヒソカとの付き合いは悲しい事にもう半年にもなる。半年前、幻影旅団とお宝という名の獲物が被った時に団員の一人らしいこの変態と遭遇した。ギリギリの所で逃げ出せたはいいものの、イルミ君経由で仕事の時に使っている名前を知られて、それから偶に私の前に現れるようになり、今に至る。攻撃こそしては来ないものの舐め回すように見られるのは慣れないし慣れたくもない。
「イルミも受けるって言ってたけど知ってる?
」
「え?…へー、知らなかった」
昨日か一昨日か、ヒソカが来るまでに経った時間がわからないからなんとも言えないけど一緒に仕事を終えたばかりだったんだけど。お互い試験受けるなんて話さなかったもんな。…ん?そういえば。
「イルミ君にヒソカが私の事捜してるって聞いたけど。何?」
「ああ、蜘蛛の話さ
」
蜘蛛…?
私はヒソカから視線を逸らして思考を巡らせた。蜘蛛。…ああ、幻影旅団の通称だった気がする。蜘蛛という生き物はえげつないと漠然と認識している私としては、関わり合いたくなさに拍車を掛ける呼び名だ。
「…蜘蛛は何ヶ月か前に私の事諦めたって言ってなかった?何、ブラフだったわけ?」
「やだな、ボクがキミに嘘を吐くわけないじゃないか
」
「うん、ダウト」
嘘臭いよと睨めば、ヒソカはわざとらしく肩を竦めた。一々腹の立つ反応を。
「ホントだよ
彼等が捜してるのは仕事がかぶった女の子じゃなく、何でも屋のブルーさ
」
「…うっわ。そりゃまた何で?」
「うちの情報担当が、ネット上のキミに興味持ったみたいだよ
」
「ああ、依頼受付用のサイトね」
不正アクセスに対し容赦無く無数のウイルス送り込むあのサイトを作ったのは、私じゃない。気づけば私のPCに内蔵されていたのを、首を傾げつつも自分に害は無さそうだからと勝手に有効利用させてもらっている。
そこそこそっちに精通していると自負している私でも、あの約百通りのえげつないウイルスをなんとかするには三回分人生費やして数え切れない量のPCを犠牲にするしかないだろう。
ちなみに不正アクセス後何もしなかった場合、一秒もせずPCが再起不能に陥る。
「絶対勝つってパソコン十台ぐらい壊してたよ
」
「…早めに諦める事をお勧めしつつ、聞かなかった事にするね」
蜘蛛ってなんとなく執念深そうだよね。なんとなくだけど。