さて、何処の世界に身を置いていても仕事をして金を稼がなければ生きていけないというのが社会の通例だ。世知辛い。
しかし私の場合は必要以上に金に執着している節がある。昔異世界からトリップする前の私が三歳の頃、父親が借金作って失踪したなんてヘビーな過去があるせいだ。許すまじ。

「青碧色の穴ぼこ牢獄<ブルースクリーン>」

念能力を発動させ、見るからに脳筋な男を自分のPCの中に送り込んだ。ちょっとゲームをしてもらうだけの念能力だ。制限時間は死ぬまでの。クリアすればそれで終わり。

「イルミ君、こっち終わったけど」
「うん、こっちも終わった」

振り返った真っ黒な光の無い猫目に、知り合いじゃなきゃホラーだなとしみじみ思う。黒の長髪だから後ろ姿が完全に闇に紛れてるんだよね。暗殺者としては模範解答ってぐらい正解なんだろうけど。
相変わらず血の一つも出さない殺し方お見事です、と彼の作り出した死体達を一瞥してから視線を外し、疲れを癒すように伸びをする。

「じゃあ帰るね。振り込みよろしく」
「あ、ヒスイ。ヒソカが君の事捜してたよ」
「うん、聞かなかった事にしておく」

ひらひらと後ろに手を振って、ポケットから手鏡を取り出し自分の顔を映す。我ながらあまりに美し過ぎて似合わない、宝石のような青色の目を見つめる事で念能力を発動させ、さっき脳筋にやったのと同じ要領で今度は自分自身を家のPCに送り込んだ。

一瞬のブラックアウトに続いて視界が開ければ、そこは一面ブルーカラーな私のPCの中。ゲームスタート。
早速やって来た人間数人を叩き潰せる青い光の刃の洗礼を避ける事もせず、というかそんな必要も無いから魔法のパスワードを囁いた。

「鳥なら死んだよ」

途端に刃は融解して、青を打ち消すような白い光の中で私は自宅の数あるPCの内一つの前の椅子に座っていた。画面に映し出されているセキュリティプログラムの一つ『青い刃』に笑んで、椅子から立ち上がった。私は寝る。
PCとPC機材がごちゃごちゃ所狭しと並べられ張り巡らされた部屋で寝るのは趣味じゃない。要するに、私の寝室はこの部屋とは別なわけで。隣のPC画面に映るゲームオーバーの文字と画面内の青に散る赤色に、早いな流石脳筋と皮肉って部屋を出た。
すぐ隣の寝る為だけの部屋(本当に部屋にはベッド以外の何もない)に入ってベッドに倒れ込む。ふかふか。眠い。


「…………ぁ」

微睡む意識の中で、小さく思い出したそれが眠りを妨げた。うー、でも眠いよ。大丈夫、私大丈夫。私強い子起きれる子。
確か明日ぐらいにハンター試験始まるんだった気がするけど、偶々今年の試験官の一人を仕事でPCに放り込んだ私は、これ幸いと拷問尋問プログラムに移行させて色々と聞き出したから直行出来る。シード枠ですねわかります。おやすみなさい。



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