一次試験は始まってすぐに絶をして先頭の試験官さんのすぐ後ろを走り続けた。
白い仕事もあるとはいえ、ほぼ黒なグレーの仕事をしている身としてはこの程度の速度で走るのぐらい何日でもイケる。
青いフードで頭を覆い、青の両目で前を見ながら走り続けた。

「いつの間にか先頭まで来ちまったな」

知った声に目をやると、キルア君が同じ年頃の少年と談笑しながら隣を走っていた。絶状態の私には流石に気付く気配はないし、邪魔するのも悪いかと声は掛けないでおく。
何でハンター試験を受けたのかと話す少年二人の会話の後、ふとキルア君が私の名前を出した。

「そういやお前さ、青いパーカーの女見なかったか?ブルーって名前で、目がすっげー綺麗な青色の人なんだけど」
「ブルーさん?うーん…見てないや」
「だよなぁ…兄貴が贔屓してるぐらいの女がこんなとこで脱落とは思えねぇんだけど」

不審そうな顔をするキルア君。心配じゃなくて不審ってとこが、うん。あの家の子供らしいというか。にしても、こいつはいよいよ出て行けなくなった。

「凄い人なの?」
「なんかよくわかんねぇんだよな…得体の知れねぇ感じはあるんだけど、普通の人っぽくもあるし…ただ、」
「?」
「目がおかしい。本当、気味が悪ぃぐらい綺麗なんだ」

私はそれに急激に嬉しくなって、とてもとても嬉しくて、だから絶を解いて思わずキルア君の肩に手を置いた。

「っ?!」
「わっ!私だって!ブルー!もう、今キルア君、私の手斬り落とそうとしたでしょ?!」

酷い!と抗議の声を上げれば、瞳孔を開かせていたキルア君はそのままの唖然とした顔で私を凝視した。

「今、何処から現れた?」
「企業秘密。そんなに驚かなくても、これでもそこそこの何でも屋なんだってば。忘れてた?」

さっきまでイルミ君が贔屓とか話してたんだから忘れてたはずないって知ってるんだけどさ。
別にそんなわけじゃねぇけど、とやっぱり怪しむように私を見るキルア君に、話を逸らすべくその隣の男の子に微笑みかけた。

「君はキルア君のお友達かな?名前は?」
「オレはゴン!お姉さんはブルーだよね?」
「そうそう」
「偽名だけどな」
「煩いなぁ。私にも色々事情があるんだよ」

必死こいて走ってる人も居る中、随分と緊張感の無い会話だ。でもさ、いや本当何度も言うけど、この世界来て一年以内の頃ならまだしも、現在のただ走るぐらい朝飯前な状態まで訓練した私じゃ、この試験凄く暇なんだよね。

「ねぇ、今もう十時間ぐらいは走ったよね?そろそろ終わらないかなー」
「いや、精々二時間だろ。どんだけ無心で走ってんだよ」
「えー?まだそれしか経ってないの?」

私の中ではもう十時間経ってるのに…時の流れって無情だ。
あー、こういう時自分の念能力が移動系ならって思う。本当に。…いや、『青碧色の穴ぼこ牢獄<ブルースクリーン>』も移動は一応出来るけど。自分の家のPCルームにしか行けないだけで。
これは確かに最初に棄権したくなる気持ちもわかると一つ欠伸をした。細めた目は生理的に潤む。

「…本当、宝石みたいだな」

ぽつりと零されたきっと完全には褒め言葉ではない小さな声に、私は喜ぶだけだった。しょうがない、もう少し頑張ろう。



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