俺の幼馴染はちゃらい。でも恐ろしい程モテる。
今日の数学の時間、やけに窓側の女子が騒がしいと思ったら奴が体育中だったらしい。種目はサッカーのようで、奴がゴール決めた瞬間授業続行不可になった。
先生、俺一週間ぐらい前、一年間片思いしてた子が奴を好きって友達と話してるの聞いて間接的にフられたので、アイツ停学にしません?授業妨害って、よくないよね?ね?!
「智春ー、おはー」
「…おはよう、昼だけど」
俺が恨みを募らせていたら議題の中心である幼馴染のゆるい襲来。この野郎、通りでクラスが騒がしいと思ったわ。呑気に豆乳なんか飲みやがって!久々知の影響か?!
「ん?あ、これ?今一組で流行ってんの。色んな味あっておいしいよ?飲む?」
「いい。てか、流行らせたのって久々知だろ」
「あはは、うん。兵助は無調整一択らしいけどね」
自然に俺の前の席に座った幼馴染は、俺の顔をじっと見たと思ったらため息を吐く。
…え。殴っていい?何こいつ自分がイケメンモテモテだからって人の顔にため息とかあ゛ぁん?!
「智春…本当に飲まない?」
「溜めて言う事それかよ。飲まないって」
「紅茶味、好きでしょ?」
「紅茶味は好きだけど豆乳嫌いなんだよね」
あ、久々知には内緒な。恨みがましい目で見られそうな気するから。
そう付け足すと、何故か幼馴染の方が不機嫌そうに席を立った。えー、何、どうした。
そのままクラスの端の方、ちょうど俺が一年間片想いし一週間前間接的にフられた子の方に歩いて行く。??
「あげる。もう要らないから」
「え?!あ、ありがとう…!」
きゃー、きゃー!嬉しい!いいな、愛子羨ましいっ!
幼馴染が戻って来る。俺の好きだった子の名前は…愛子である。
「てめーはおれを怒らせた」
「何急に。承○郎さん」
幼馴染よ、心の中だから言うが俺は今のお前のちゃらい行動に結構マジでイラッときている。お前が俺の好きな子なんて知るはずねぇって事は都合良く無視する。
ここでは軽くネタにしておいたが、後日お前が体育の時にいつも持ってってるタオル、プリキュ○のにすり替えといてやるからなっ!!ドン引きされるがいい!!
「そういや、お前わざわざクラス来たんなら俺に何か用あるんじゃないの?」
俺が親切にも聞いてあげると、幼馴染は何故か不服そうな顔をした。何でだよ、意味わからん。
「幼馴染の友人に会いに来るのに用が必要なの?」
「あ、無いんだ。いいけど、クラスにも友達いっぱい居るだろ?わざわざ用無くて来るか?」
俺が極普通に言った事に、幼馴染は何秒か沈黙し、次いで俺から視線を逸らし頬を僅かに赤らめた。
「俺は智春に会いたいから来てんの。言わせないでくれる?」
…。
「それ、お前が女の子落とす時の台詞?俺も使っていいの?」
「智春のばか!」
怒って教室から出て行った幼馴染に一度首を傾げ、まぁいいかと次の科学の授業の教科書を取り出す為鞄を開ける。
我ながら綺麗とは言えない鞄の中から教科書をがさごそ探しながら、自分を落ち着かせる。
あー、びびった。不意打ちで男相手なのにちょっとときめいただろうが。ちゃら勘右衛門め。