文明の利器(拳銃)を使うより、ナイフ両手に特攻するのが最強なようだ。

「魔法にだけ頼るというのもアレですが、僕のやり方の方がずっと血生臭いんですから難儀なものです」
「お前自身は血も流れていない癖に真っ赤だな。…お前のその異常なスピードは何なんだ?」
「じゃあ答える代わりに血拭いてください」
「…構わんが、それだけ血濡れなら風呂に入れ」
「嫌いなんですよ」

風呂って色々面倒臭いんですよねー。髪洗うのも身体洗うのもその後乾かす作業も。
僕は顔面に勢い良く血飛沫を浴びたせいで血塗れな髪を無造作にかき上げ後ろに流した。

「人形とは言え、洗わないと傷むぞ」
「あー…それはちょっと、勿体無い気もしますね。ですが背に腹は変えられません」
「はぁ…洗ってやるから早く教えろ」

ルシウスさんは僕に優しいと思う。他の闇の帝王様の部下(死喰い人と言うらしい)は、僕を見下したり僕の血みどろな殺し方に怖がったりで話も出来ない。

「ただ、昔から足は速かった。それだけです」
「そんなレベルのスピードとは思えないが?」
「んー…本当は少しだけズルしてます。僕と同じ家系の人は皆出来る程度のちゃっちいもんですけどね」

ちょっと筋肉の構造を細胞から弄れるだけです。それにほとんど、本当に速いだけですし。足に限らず、全てが。脳からの伝達速度がまず人間離れしていますから。訓練しましたし。
ルシウスさんが黒い服(ローブと言うらしい)のフードを取り、死喰い人の証のお面も外して僕を見た。
あれ、僕にもそれがあれば風呂に入らなくても済ん――いや、消耗品扱いで毎回汚しそうだから駄目か。

「帰るか」
「あ、ルシウスさんパイの実切れてます」
「…買いに行くから着ておけ」
「わーい」

僕はルシウスさんの綺麗なローブを貸して頂き、血濡れの髪を隠すためフードまで被った。
パイの実を買う為に、ルシウスさんが嫌いなマグルの街まで二人で歩く。

「ルシウスさん、スーパーの前で待ってます?中マグルでうじゃうじゃですよ?」
「いや、今更だ」

そう言えば、いつもパイの実買ってきてくださってるのもルシウスさんでしたね。

ルシウスさんがマグルのお金で僕のパイの実を買ってくださっている図は、横から見ていてかなりシュールだった。


「さっきルシウスさん見ていて思ったんですけど、」
「…もう買わんぞ」
「そっちは心の中に留めておいてますよ」

今の見た目は中高校生ぐらいですけど、精神年齢はもっと大人なので。

「ただ、僕よりルシウスさんの方が、よっぽどらしいですよね」
「何の話だ」

元は僕、訓練で肌とか傷だらけだったので、ルシウスさんの方が綺麗で人形らしいなと思っただけですよ。


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