僕はあれからしばらく任務にも就くことなく、闇の帝王様の屋敷の小綺麗かつ大きな部屋で何不自由なく暮らさせて頂いている。
まぁ、給料出なさそうだし代わりに衣食住保証して頂くのぐらいは正当な報酬だと思います。まだ仕事してないけど、生涯労働ほぼ確定してますし。
「ルシウスさんって結婚してますか?」
「しているが、それが?」
「いや、僕に付きっきりで此処に居て大丈夫なのかなと」
別に本当に心配しているのではなく、社交辞令ですが。
ルシウスさんは、知らないけどたぶんお偉いさんな家系だと思う。華族とか貴族って言葉が似合う。ついでに紅茶と薔薇も似合う。
あー…でもそれは今の僕も似合うか。フレンチベージュのさらっさらストレートの髪と、アイスブルー色のルシウスさんの目とお揃いのようなアイスグリーンの目に、綺麗過ぎる白肌。まさに人形。いや、色素に関してだけ言えば、実は以前と変わらないんだけど。
でも僕は紅茶より人工的な色でどろ甘いメロンソーダとパイの実食べている方が好きなんだけどね。
「お前、私の家庭など気にする奴ではないだろう」
あれ、バレてました?
ルシウスさんも大概、僕を理解して来られたらしい。
「でもルシウスさん、案外僕と居るの嫌いじゃないですよね?」
「ふっ…何故そう思う?」
「ルシウスさんは、僕にしてはいけない事はあるけれどしなくてはいけない事はないからです。…ああ、側を離れる事は抜きにして」
僕はパイの実を口に含んだ。この少なめなチョコの割合が絶妙だと思う。メロンソーダで結局甘々になるけど。
人形でも食事排便睡眠出来る身体で良かったなと思う。食べるのは少しだけ好きだから。
「セピア」
「何ですか?」
パイの実欲しいんですかと一つ差し出せば、苦笑いで僕の口に押し込まれ返された。正直、ルシウスさんがこんなスキンシップして来るの意外です。嫌じゃないですけど。
「お前本当は頭が良いな?」
「それ重要ですか?」
「いや」
あれ、思った以上にルシウスさん僕に好意持ってるかも?
「ただ、私は闇の帝王に常にお前に付いていろとまでは命令されていない」
「そうですか」
僕は僕を好きな人が好きですから、僕もルシウスさんの事結構好きですよ。