「スーツってえろいですよね」

枕を足の甲で踏むという、ベッドに頭と足の位置を逆にうつ伏せで寝転がっている態勢で緩く笑みながらルシウスさんを見て言う。
現在のルシウスさんは僕の言葉が指すように、素敵に無敵なスーツ姿であられる。
ルシウスさんはそんな僕にちらりと視線を移すと一つため息を吐いた。僕達恋人みたいなアレなのにひっどぉい。浮気しちゃいますよー?

「…その割りに、お前はスーツは着ないな」
「まぁ、今は必要無さそうなので」

その割りに、という言葉から僕がルシウスさんにどう思われているのか察して間違ってないなぁと肯定を頭の中でしてから、にっこり笑って言った。
誘惑”しなければいけない”って状況がもうないですからね。昔はわりと着てた気がするんだけど…ネクタイがうざかった記憶以外あんまり覚えてない。

「ルシウスさんはブラックスーツ着るとスーツに流れた髪が映えて綺麗ですね」
「…」

上着を脱ごうとしたルシウスさんが一瞬動きを止め、またちらりと僕を見てから何事も無かったかのように上着を脱いだ。

「そもそも中に着ているホワイトシャツが、フォーマル感と白という色から連想される純潔さとが着用による僅かな皺や草臥れ感により穢されたような錯覚を巻き起こして、えろいですよね」
「同意を求めるな」

僅かに僕を睨めつけるルシウスさんは、そんな事考えてもみなかったらしい。えー、せめて学生時代女の子の制服白シャツで妄想とかした事なかったんですか?きちっとした型のシャツが女子特有の膨らみによって押し出され、

「お前女に興味あったのか…?」
「素で驚かれると僕も反応に困りますね」

いや嘘だけど。僕を驚かせたかったら僕が寝てる間に部屋を百万本の薔薇で埋め尽くすぐらいはして頂きたい。
でもなんと、僕がちょっと心の中で健全えろな女子話をしたらそんな事を言われるなんて。もちろん声に出してたのは確信犯だけど、その反応は想定外ですよ。

「普通に女もそこそこ誘惑して生きて来ましたし、今の身体は未だしも前はヤる事ヤってましたよ?」

それこそ、女に突っ込んだ事も男に突っ込んだ事もある。突っ込まれたのはルシウスさんが初ですが、挿れる事に関しては百戦錬磨です。さすがにそれは言いませんけど。


「セピアは私が居なくても生きていけそうだな」

どことなく過去に浸っていたというか自分の経歴をぼんやりと考えていた僕に、ルシウスさんがさも当たり前のようにぽつりと呟かれた。僕は数回瞬きした。

「そりゃ、犬猫じゃないんだから生きられますよ。何言ってるんですか」

確かに僕は、闇の帝王様失脚後は奥さんと別れたルシウスさんの家で養われ働かずして飯を食うニート生活であり、パイの実でルシウスさんに飼われているように見えなくもありませんが、それはあくまで僕の意志ですし。

「けど、この世界でもあの世界でも僕が生きたいのは貴方の隣だけですよ」

目を見開いたルシウスさんに、僕の愛ってまだまだ信じられてないんですねー、と軽やかに笑った。


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