ベッドの上で、いかにパイの実の表面の蜜によってちょっとペタった指をえろく舐めるか、という練習に熱中していると、ルシウスさんに腕を掴まれた。それでも指は口から抜かないまま、立っているルシウスさんを見上げる。
「にゃんひぇすか」
「…誘っているのか?」
…ああ、成る程。
僕は指を口から抜き、ティッシュで拭った。
「すみません、癖です」
ルシウスさんが見るからにどんな癖だよという顔で僕を見ていらっしゃるが、癖は癖です。
魅了するのは癖なんですよ、魅了しようとするのは、僕はどうでもいいけれど仕事に役立ちます。それが例え暗殺業でも。
「自分の心は誰にも渡す気は無い癖に、随分と人の心を奪おうとするな」
その皮肉に、僕は父上が望んだんですから仕方ないでしょうと返そうかと思ったが、ふと此処にはもう父上は居ないと実感した。
「僕の心なんて、欲しいですか?」
「欲しいと言ったらくれるのか?」
あはは、ルシウスさんにしては随分と素直でいらっしゃる。
僕は抱っこを強請る子供のようにルシウスさんに両腕を伸ばした。ルシウスさんはそれを容易く受け止め、僕を抱き締める。
「なぁんで、皆僕を好きかなー…」
顔を見られない態勢なのをいい事に、嘲るような顔で呟いた。