ヘリでわざわざお迎えとは、イルミって大概僕の事好きだよなと思う。キルアの次に。
「長期任務。セピア兄さんとそのまま行って来いだそうです」
前言撤回。ただのゾルディックの申し子だった。
「何それ。突然の放し飼い?父上らしくない」
「だから俺も一緒なんです。仕事はほとんどセピア兄さんしか出来ないものです」
ああ、そういう事。僕、弟には弱いもんな。
いや、父上があえて僕がそう思うようにと弟は護るものだって僕に教育して、本来なら義理の甥にあたるはずのシルバさんの息子達を僕の弟としたのだけれど。
ちなみにイルミが家族他人含めて僕にだけ敬語なのは、イルミの念の稽古をつけたのが僕だからだ。発以外でも2歳から念を使えた僕の念の精度は高かったから。ちょっと怖がられるのは稽古をつけた側の宿命さ。
ヘリに揺られながら、イルミに渡された次の仕事の資料に目を通す。
えー…何々、ゾルディック一家殺害を目論む組織で、あー…裏で此方とも、でその部下の誰かがまた他と繋がってる恐れが、うんうん。
「つまり潜入して徐々に内部の奴等全員魅了人形(ラブスレイブ)って事ね」
「うん」
僕は資料をイルミに返し、目的の組織のアジトに着くまでその代わりに受け取ったパイの実をひたすら咀嚼した。
これはまったく、帰るのがいつになるのか。
この時の僕は、帰ったらキルアが家出騒動起こしてキキョウさんとミルキぶっ刺していて、その三日後人形に魂入れられて異世界に召喚されるだなんて思ってもみなかったのであった。当たり前ですね。