ちゃんと自力で過呼吸を抑えた僕だけど、滝がうっざい。

「やっぱり帰った方がいい!」
「馬鹿か!何でせっかくてっぺんなのに景色見ないで帰るんだよッ!いいからほら、来いっ!」
「に゛ゃあぁああああっ!渡一死んじゃう゛ぅううっ!」
「死なねぇっつってんだよのーたりんがッ!!」

泣きわめく滝の手を引いて、無理矢理もう五歩てっぺんに向けて登る。
お前、僕に余計に体力使わせることになってんの気づけよ。

てっぺんに到着した僕は、その絶景に驚いた。
青い空はいつもよりずっと近くて、僕達の住む村は遠くて、人間なんて見えなくて、だけどずっと遠くの森と海まで見える。

「すっご…!ちょっと滝、いつまで泣いてんの!景色見ろきれい!」
「ふぇー?…わあっ!凄ーい!」
「だろ?!来てよかったな!」
「うん!きれー!」

滝の表情が笑顔に変わったことに満足し、僕達はしばらく景色を楽しんだ。
ふと、繋いでいた手の力を強められて僕は滝の方を見る。

「渡一は今日、一生分見ておいてね!」
「は?何で」
「もう来ちゃダメッ!危ないもん!」

…まだコイツさっきの引きずってんのかよ。面倒臭ぇな。てか、この景色を一人占めする気か?

「はぁ?!お前、誰のお陰でこの景色見られたと思ってんの?!」
「だって、だってここお医者さんいないから、渡一倒れたら死んじゃう…」
「…」

それは…そりゃ、僕もちょっとまずいかなとは思ってる。
うるんだ目でお願いするように僕を見る滝に、僕の良心がちょっと揺らいだ。

「まぁやめないけど」
「渡一の馬鹿ぁあああ!」
「じゃあ僕が倒れても背負って下山できるぐらいに滝が強くなれ」
「っうー…頑張る」
「頑張れ」

ちょろい奴だ。
泣き虫のお前がんな簡単に強くなるわけねぇだろバーカ!


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