思い出したくない記憶を振り払って、俺は笑った。
「それで、俺を呼び出した理由とは…?」
そうそう、俺はだからじゃあ結局何の為に跡部に呼び出されたのかと。
「…腹減ってねぇか?」
「え、う、正直」
だから早く解放して頂きたいのですが。
と、いう意味で俺は言ったはずだったのですが俺が言った直後跡部様が指をお鳴らしになられまして、すると樺地君が現れまして、重箱弁当を置いて去って行ったのでした。
「え、ええ?」
「好きなもん食え」
「…食べたからテニスとか後で言ったりは、」
「しねぇよ」
なんだかんだ言い争って、言いくるめられて、結局跡部と二人で重箱つつくトゥデイの俺。
美味い。とにかく美味い。だが意味はわからない。屋上の椅子に跡部の隣に座って重箱弁当…。
「お前は良い奴だ」
「ッぶ…!」
跡部さんちょ、何そのお昼タイムからの突然の賞賛?!
「な、なんすか行き成り」
「他の奴等からも聞いてきたが、昨日で確信した」
一人で話し出しちゃったよ。跡部様プリーズ会話のキャッチボール。
「日達、俺の事嫌いなんだろ?」
「っぇ゛ほ!げほっごほ…っ!」
噎せました。
はい、そうですその通りです事実です…って、言えるか!
「な、何を急に仰る?」
「弁解しなくていい。色んな奴等から聞いてるしな」
俺の視線を逸らしながらのすっとぼけを、跡部は普通に否定する。
…まぁ、俺色んな人に言ってきちゃったしね。本人の耳に入ってても不思議はないか。
でもそれをわざわざ口に出すその心は?ついでに俺が良い奴というのとどんな関係が、
「なのに、昨日の俺に対しての態度はまるでそれを感じなかった」
…。
「お前は良い奴だ」
……。
…ああ、嫌だ。嫌になる。
跡部が、もっと馬鹿だったら良かったのに。俺が、もっと上手く出来たら良かったのに。
跡部が、俺のあの時の様子気づかなきゃ、気づいても放っておくような奴なら、俺があれぐらいで泣きそうになんてならなかったら、こんな世界――ら、
「狡い、なぁ…っ」
何も解っていないくせに。解るわけが無いのに、そうやって、容易く、ああ最高に格好良い。俺の負けだ。
「最初から、嫌いじゃなかったよ」
突然泣き出した俺に意味解ってねぇくせに、解る訳がねぇのに、跡部は慰めるように俺の頭をぽんぽんと撫でた。
大好きだった。
テニスの王子様のキャラとして、一番好きだった。その全てに恋をしていた。
だからこそ、跡部景吾に触れる事は前の私と前の世界を思い出させ、どうしようもなく此処が漫画の世界だったと思わせるから…認めてそれでも生きなきゃいけないから、怖かったんだよ。