秋です。飯の美味い時期だ。
まぁ、それは置いといて教室の空気が悪い。これじゃおちおち教室で焼き芋食えん。
「男子が悪いが、女子に非がないわけでもない」
喧騒に紛れて、大人しく普通の弁当を摘まみながら呟けば、岳人がギョッとした目で俺を見た。
あ、田中さん泣いちゃった。確かに言ってること正論だったし、協力しない男子が悪いけど…泣くのは卑怯だろ。全面的に被害者みたいになる。田中さんの言い方にも問題あったのに。
つまり、只今我が一年C組は男子と女子の教室戦争中なのである。
田中さんの涙で余計ギクシャクした教室の中、俺とジローといる時は多少大人になる岳人でさえ当事者の一員として、何処か気まずそうな空気を纏っている。俺は自分だけ遠くにいるような気がした。
ああ、中学生だな。思春期の子供集めてんだから、この事態は仕方あるまい。中学こんなんだったっけ。でもこれも、ちょっと歪な、青春。
そう思っている時点で、俺はあくまで此処に生きている奴等とは決定的に違っていて、当事者、ではなかった。
「流れ弾、怖いんだよなぁ」
精神的に多少お兄さんだからって、自ら当たりに行く気は無い。痛いもんは痛いし、何より岳人に悪い。
「あのよ…朔人、何でそんな普通の顔してられるんだ?」
岳人に怪訝そうに聞かれた。しまった、やっぱり不自然だったか。
「あー…どうしようもなくなったら担任がどうにかしてくれるだろ」
クラス険悪なままだったら困るんだし。
先生って大変だよなぁ。俺は助けないけど。
「お前ってさ…」
「な、何」
急に真剣な顔で見てきた岳人にびくっとなる。ひ、非難されるのか?!この他人事な態度が岳人の気に触ったのか?!
「いや…何か、たまに変に達観してるよな」
…岳人は、たまに変に鋭いよな。
「はは」