最近、休み時間が来る度煩い。
「別荘だぞ?跡部ん家の飯マジで旨いぞ?」
「温水プールもあるんだよ!ね、朔人も行こうよー!」
「君達、いい加減諦めたまへ」
それと言うのも、この氷帝お子様コンビがテニス部の旅行に俺を巻き込もうと必死なわけだ。何だ、本当にどうして俺も連れて行こうとする。何か企んでるんじゃあるまいな。
「テニス部で親交深めてろよ」
「だって…」
「おい、馬鹿!」
…ん?何そのやり取り。え?本当に何か企んでんの?
「何だよ」
「…岳人ー」
「お前のせいだろ、ジロー。まぁ、そのだな…朔人、跡部嫌いだろ?」
俺はきょとんと岳人を見た。何故にそこで跡部。
「うん、まぁ」
「でも俺もジローも跡部好きなんだよ」
何という腐女子歓喜発言。そういう意味じゃない?知ってる。
「前も言ったけど、お前等の前で悪口とか言わないし、気にすんなって」
「それじゃ嫌なのっ!」
ジローが駄々っ子のように怒鳴った。俺は目を細め、黙ってジローの言葉を待つ。
「跡部、本当にいい奴だCー!朔人だって、跡部ちゃんと知ったら絶対好きになる!」
「…」
なんてジローらしい意見。
まぁ、わからなくもない。跡部は努力家だし、漫画でも確か自分のプライドより部を優先させていた。いい奴なんだろう。
「だがそれとこれとは別だ。俺は上から目線な奴もスーパー目立つ奴もモテすぎる奴も気に食わん」
「それ以上に跡部は格好Eしいい奴だCー!」
「ジロー、朔人の顔死んでる」
岳人は何となく気づいていると思う。
跡部が必要以上に関わると言ってしまった時点で、絶対俺が行かないのを。だからジローみたいに粘らない。
「ジロー、今回はもう諦めようぜ」
岳人が俺の机に張り付くジローの肩に手を置いた。
ジローは岳人を振り返り、目を見開く。
「何そのアイス…!」
「いや、冬でもアイスって食べたくなるよな。保冷剤と共に持ってきたんだが、やむを得ん」
「すまん、買収された」
結局は俺も俺も、とジローがねだる展開になり、本当はちゃんと三人分持ってきていた俺がアイスを出して三人で食べて、話は終わった。
岳人は何となく気づいていると思う。
俺が跡部を嫌いと言うのが――嘘であることに。