夏のジローは普段と変わらない。

「朔人ー!岳人ー!」

ただし此方の体感温度が高くなる。ちょっと抱き着いてくんな、バカ。暑い。おいちょっとそこの女子、ジロー君かわいい(はぁと)じゃないだろ。暑いだろ。暑苦しいだろ。
どうやら夏の暑さではジローをどうこうすることはできないらしい。羊なら暑いの嫌がれよ。

「とりあえず暑うざいからジローは離れろ。話はそれからだ」
「Aー…」
「張っ倒すぞ、あ゛ん?」
「朔人、こ、怖いCー…」

ちょっと凄むとジローは怯えたように離れた。岳人にはお前その覇気どっから持ってきたんだよ、と引きつり笑いされた。
会得した場を聞かれたなら昔ちょっとたしなんでいた格闘技の道場で、なんだが、教えてくれた師範に朔人君、立場上私が言うのも難だけど君喧嘩向いてると思うよと微妙な笑顔で言われたからな。嬉しいような、悲しいような。

「ジローさ、夏休み…あ、チャイム鳴った」
「次家庭科だから大丈夫」
「何が大丈夫なのか意味不明だが、大丈夫ならそれでいいよ」

まぁ理由は家庭科は調理実習の時出欠とらないからなんだろうが、先生…同情します。
岳人が何作るんだよとジローに聞いてジローが無駄にピースしながらマドレーヌ!どうせ女子から貰えるCーとか何とか言っているのが聞こえた。ここで、このモテ野郎めぎりぎりとならないのは、単にジローが女子に男扱いというよりマスコット扱いされていることに起因する。

「俺等も次山内だからジロー居ても問題ないよなー」
「優しい先生に対してこの仕打ち。お坊っちゃまお嬢様学校では授業中、皆背筋正して礼儀正しく授業受けてるなんて幻想だよ」
「言っても、跡部は授業中凄ぇ真面目らしいよな」
「超優等生らしいCー」
「マジか。今俺、ちょっと跡部尊敬した」

跡部クラスの金持ちになると、またレベルが違うらしい。きっと色々家で教育されてんだろうなぁ…。一生来なくていいが、もしいつか話す機会が来たら聞いてみたいかもしれない。
教室に現国の山内先生が入って来て、日直が(最初と最後だけだが)礼儀正しく授業開始の挨拶をする。

「で、夏休み何?」
「今の授業開始の一連のやり取りガン無視か。いや、ジロー何か予定ある?」
「テニス!」
「以外」
「寝る!」
「「デスヨネー」」

岳人と俺の声が重なったことは必然であると、ここに強く明記しておく。

             


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