まったく、昨日は災難だった。とりあえず今日ジローに会ったら一発殴る、とにこやかに考えながら教室のドアを開けると、壁があった。
…?あれ、今俺ドア開け…あれぇ?
「ウッス」
「へぁ?!あ、人?!あの、あれだ!樺地、くん?」
「ウッス」
壁だと思っていたものは人で、前に樺地君が立っていただけでした。この身長でまだ中二とかどういうことなんですか。
「えっと…退けてもらえる、かな?」
「…日達さんに、用があります」
「俺に用?えー…何?」
まさか昨日の件で跡部が逆ギレしたとかか?!
俺がビクビクしながら聞くと、樺地君は相変わらずの無表情と威圧感で口を開いた。
「跡部さんから、伝言です」
「跡部?え、怖ーい」
「…昼休み、屋上に来て欲しいそうです」
「完璧に呼び出しじゃん?!リンチじゃん?!何?!やっぱ昨日のが気に食わなかったの?!どっちかと言うとあれは俺、被害者じゃん…!」
なんて言ったところで跡部様の前では俺みたいな小市民の意見なんて通らないんですね、わかります。
…まぁ、昨日跡部の様子おかしかったもんな。妙に下手というか、しおらしいというか。
「違います」
「え…何が?」
「悪い話じゃないので、来てください。…失礼します」
「あ、うん。伝言ありがとね」
「ウッス」
のしのしと俺の教室から去っていく樺地君の後ろ姿を見て、本当に跡部大好きなんだなぁと染々思った。
たまに召し使いみたいで樺地が可哀想だろとかいう跡部アンチが居るが、それは違うだろ。だって明らかに樺地君好き好んで跡部追い掛けてるじゃん。
まぁ、跡部クラスになると家同士の繋がりとかもあるんだろうが、それだけでもあるまい。あの二人には信頼関係を感じる。
「はよ。呼び出されたな」
「おはよ、岳人。何だかなー?行きたくねぇ…行くけど」
跡部に命令されるより、樺地君にお願いされる方がなんか断れないよなぁ。