現在、俺は男子テニス部を見ていた。
…断じて見学ではない。岳人の奴がケーキバイキングの割引券、しかも今日が期限で1枚3名まで利用可能なやつを持っていて、一緒に行く予定だった宍戸さんが急遽用事が出来たらしい。そんなのに誘われた行くしかねぇじゃねぇか!待ってるしかねぇじゃねぇか!
「俺様の美技に酔いな」
「「「きゃあぁああ!跡部様ぁあああっ!」」」
「お、おお…凄ぇ…」
間近で見るとまた一段と迫力のある跡部ファンの女の子達に気圧されつつも、俺は跡部を観察した。
普通の神経じゃあんな台詞吐けねぇよなぁ…。いやでも、夢小説でよくあった爆笑とか…それはない。うん。ただ引くだけです。
あ、今の俺の思考失礼だった。今同じ世界で生きてんのに、夢小説とか例えで出しちゃ駄目だよなぁ…。
まぁ、俺も前世の女でまだ青かった時期は跡部が好きだった事もあったなぁ…。金あるし顔いいし、努力の面も描かれてたから仕方ないっちゃ仕方ないんだが。
「皆、生きてるんだもんなぁ…」
ポジティブシンキングな俺はどこぞの二次創作主人公のように思い詰めたりはしないが、不思議な感覚だ。若干の未来と結構プライベートなプロフィール知ってるんだから、ある意味ストーカーより質悪いかな?
「バレなきゃ問題ねぇけど」
「自分、悪い事でもしたんか?」
「いや、不可抗力もいいとこ。俺はただ漫画読んだだけなんだ…し…?」
俺は目の前の人物を意識するべく瞬時に思考を巡らせた。
「ん?自分確か…せや、ポッキー君やろ」
やっぱり忍足侑士さんでした、もう嫌だ。
てか、ポッキー?ポッキー…はっ!ジローの件か!そういえば俺は忍足に恨みがあるんだった!
「で、漫画って何なん?」
…何自ら漫画の事バラしかけてんだ俺?!独り言でバレちゃうとか、どんな王道だよ?!いつから俺は天然になった?!俺の馬鹿!
「おーい、話せるかー?」
「忍足さん、練習に戻った方がいいと思います」
「…せやなぁ」
微妙な顔をしながらも、忍足はフェンスを離れた。
これからはフェンス越しに話すのは、未来に出来る彼女とだけがいいです。