俺がまだ小学校一年生の頃、俺は自分が女だったという記憶があることがコンプレックスだった。
あくまで前世の話だから、ある日突然女に戻るなんてことはさすがに起こらないだろうし、俺は今の母さんの腹から間違いなく男として生まれた。つまりこれから男として生きていく俺に、女だった記憶は邪魔だ。
本当に、何で俺前世のこと覚えてんだよ。スーパーベイビーかよ。
そして短絡的思考の現在見た目小一男子な俺は、男らしくなろうと決意した結果…此処、近くの古武術道場に参った次第。
ところでアポとるの忘れたし、一人で来たんだけど相手にしてもらえるだろうか。ちなみに古武術ってどんな格闘技?空手とか柔道とかよりなんか名前が格好いいし場所近いってだけの理由で来たんだが、相手にしてもらえるかな?あ、今相手にしてもらえるかって二回言っちゃった。
「家に何の用だ」
「へ…?」
後ろから声をかけられ振り返ると…あらかわいい。
色素の薄いショートカットで長い前髪をした目付きの鋭い女の子が、じっと俺を見ていた。ふぅ…まったく俺がロリコンだったら誘拐していたところだ。
「家って…古武術道場」
「ああ」
「道場がお家なのか?」
「ああ」
肯定した女の子に、そりゃ凄いと感心する。いいなぁ、俺も家が道場がよかった。
…待てよ?
「じゃあもしかして、君も門下生だったりする?あ、門下生って言ってもわかんないか。つまり、」
「ああ、門下生だ」
…最近の子どもは教養があるんだなぁ。それとも道場の子どもだからわかるんだろうか?
いやぁ、でも同じ年頃の子もいるんなら安心した。なんとなく他の格闘技より子どもが少ないイメージだったからなぁ。
「見学したいんだけど、入って大丈夫かな?」
「…付いて来い」
俺を門の前から退かし、すたすたと中に入っていく女の子に、俺は慌てて小走りに追い掛けた。
何だかんだで優しい子…なのかな?ツンデレか?ツンデレなのか?よし決めた、俺はこの道場に入門するぞ!
「なぁ、名前なんていうの?」
「…」
「あ、俺は日達朔人な!」
「…日吉若」
ひよしわかし、ちゃんか。ふむ、珍しい名前だな。だがどことなく和風で、道場にも本人の雰囲気にも合ってるいい名前だ。
「ひよちゃん、これからよろしくー」
「…よろしく」
ちょっと嫌そうな視線は気になったものの、よろしくされた!幸先は順調だ!
よし、俺の将来のお嫁さん第一候補はひよちゃんにしよう!…本人に言ったらまた嫌そうな顔される気がするけど。
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