岳人と最初のミーティングだけの委員会を終えて廊下を歩いていると、久しぶりに小学校からの親友金澤進と会った。
「岳人、と朔人じゃん!久しぶりーッ!テニス部入ろうぜテニス部!今からでも遅くない!」
「やだって」
出会い頭に勧誘してくる進を嫌な目で見る。岳人は俺と進のやり取りを鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で見ていた。
いつも思うんだが、鳩が豆鉄砲喰らってる顔なんて見たことないし今後も見ないだろ。本当にこんな顔なのか?
「二人、知り合いか?」
「おう!」
「前話した、しつこくテニス部に勧誘してくる奴」
「…ああ」
そういえば、岳人には前にこの三人プラス岳人の友達でテニスしようとか言われてたな…する気ないけど。
「てか、岳人と進こそ知り合い?テニス部って部員数異常だったよな?」
「進はもうテニス部一年の半分ぐらい友達なんじゃねぇの?」
「何それキモい」
「朔人、テメー…」
進に睨まれた。
いやだってキモいだろ。まだ入学して一週間ぐらいだぞ?…いやキモい。やっぱキモい。
「名前とか覚えられんの?」
「俺、天才だから!」
「成る程、そこに頭を使い過ぎてるから他が残念なわけか」
「おい」
俺がうんうんと進を哀れみながら納得していると、進に睨まれた。
ただ攻撃しては来ない辺り賢明な判断だ。進は馬鹿で喧嘩っ早いが勝てない勝負はしない。つまり典型的な負け犬キャラ。噛ませ犬。
「お前等、仲良いなぁ」
「仲は良いけど今言われるのは納得いかない!」
キャンキャン吠える進はまさに子犬だ。
何だろう、進って結構格好いいし明るいし面白いし友達多いし、一見モテそうなのにまるでそんなイメージないんだよなぁ…。
とりあえず俺、早く彼女作ろう。進に先越されたら悔しい。
「進って面白いけどうざいよなぁ…」
「同意」
「岳人さん、俺本人!目の前にいるんですけど!聞こえてるんですけど!朔人もさらっと同意すんなあぁぁああ!」
あー、進うざー。