友達の恋人に恋をしてしまった、かもしれない。
え、どうするよ?!俺は迷わず恋と友情なら恋をとるが、人の幸せを壊してまで奪っていいのか?!そもそも萩の気持ちは?!
てか、こう考えてる時点で俺もう萩のこと好きなんじゃねぇのか?!
「朔人、話聞いてた?」
「はっ!ごめん、聞いてなかった」
「だろうね。今から図書館の企画を考えるペアを作るんだって。男女問わず、四人一組」
「成る程。萩、サンキュー」
萩はどういたしまして、と爽やかに笑って残り二人どうしようか?と教室内を見回した。
なんというか、萩の話は丁寧で好感が持てる。…いやいや、今はもう萩のことはいいから!えっと他二人必要なんだっけ?
「あ」
「うん?誰か知り合いでもいた?」
萩の問い掛けに、思わず洩れた声もなかったことにして何でもない、と言って俺はすぐ視線を逸らそうとした。
目が合った。
「すみません!お二人は先輩ですよね?」
「そ、そうだけど?」
俺は挙動不審になりながらも辛うじて受け答えした。
俺に話し掛けている男…確証はないがおそらく長太郎君だ。確か宍戸さんとダブルスの後輩。名字は忘れた。
何故そう思うのかといったら、この特徴的な銀髪に長身に丁寧な話し方…これは長太郎だろう。ちなみに隣にもう一人いるが、そいつはまったく見覚えがない。
「前年も文化活動委員をやっていた人と組んだ方が効率良く話が進むと思って声を掛けたんですが」
「…萩は確かに前も文化だけど」
「そうなんですか!…あ、えっと、でもその、他の人を当たりますね!」
渋る俺に気づいたのか、長太郎(仮)は笑顔で取り繕うと、踵を返した。隣の友達は不思議そうに長太郎(仮)に声を掛けている。萩は何も言わない。
…なんか、俺凄ぇ我が侭じゃないか?
長太郎(仮)はちゃんとした理由で委員の後輩として接してるし、大体経験あるのは萩だから俺は関係無いのに、長太郎(仮)が後のテニス部レギュラーっぽいから一緒にペア組みたくないとか。
うわっ、メチャクチャ自己嫌悪してきた。
「待て。ごめん、俺の態度が悪かった。そこの二人、良かったら俺達と組まないか?」
気づけば長太郎(仮)と友達を呼び止めていた。萩の意見を聞いていなかったことに気づき、はっとして萩を見ると、いいんじゃない?と優しく微笑んでくれた。