正直、進繋がりがあるとは言っても初対面の男女だし、俺は萩さんとそんなに話せないと思っていた。

「趣味生け花?!凄ぇ!」
「祖母が先生をやっててね、小さい時から習ってるんだ」
「へー!」

意外と話が続く。
萩さんは髪型とか趣味とかから、大和撫子で清楚な印象を受けるが、スポーツも結構好きらしい。小学生の時からテニスをやっていて、話し方も中々ボーイッシュ。だからか凄く話しやすい。

「へぇ、朔人君ってテニス部じゃないんだ。進と仲良いから見たことないけどそうなのかと思った」
「テニスは好きだけど、俺は趣味の範囲」

萩さんは茶道部と迷いながらもテニス部に入ったらしく、男子テニス部のこともよく知っていた。まぁ、200人も把握しきれるわけがないが、進は準レギュラーでもないのに相当目立っていて覚えていたらしい。
間も置かずに話していると、いつの間にやら委員会のある教室に着いていた。

「自由席っぽいな」
「じゃあ一緒に座ろっか」
「ああ」

俺は萩さんの申し出に頷き、八割ぐらい集まっていると思われる教室の席に二人並んで座った。

「文化の最初の仕事って、オペラだっけ?」
「うーん、7月のオペラ鑑賞会より先に、去年は図書館の企画があったな。メインはやっぱり11月の文化祭で、サブメインは1月の合唱コンクールだけどね」
「…思ったより大変そうだな」
「ふふ、氷帝の委員会にただ楽なのなんてないよ、朔人君?」

萩さんが小さく笑いながら若干上目遣いで小首を傾げた。
…うわ、うわぁ…なんかヤバイかも。進の彼女なのに、メッチャかわいい。
俺は自分を誤魔化すように咳払いし、萩さんに向き直った。

「朔人でいいよ。俺も萩って呼ぶから」
「うん、わかった」

誤魔化せてなかった。

             


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「見えない臓器の名前は」
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