「じゃあ、俺帰りのHR始まるから戻るCー!朔人、岳人またねー!」
「ああ。ジロー、またな」

両手で大きく手を振ってにこにこと自分の教室に帰って行ったジローに、俺も思わずつられて微笑みながら手を振った。


「向日、ジローって何処のクラスなんだ?」
「隣」

ふと疑問に思って向日に聞けば、簡潔でぶっきらぼうな答えが返ってきた。
うん?そういや、さっきジロー、向日にも声掛けてたよな?何で向日は何も言わなかったんだ?聞いてなかった?

「隣ってどっち?A?C?」
「C」

…簡潔過ぎる!何?なんかさっきから視線も合わないんだけど!怒ってんのか?
…あ、俺がF組辺りで抹茶ムースポッキーの話聞いたって嘘言って、意図せず向日を走らせたから怒ってるとか?あり得る。

「向日ー、謝るからもう怒んなよ」
「あ?別に怒ってねぇけど」

本当に怒ってなさそうな声音ときょとんとした顔に、俺もきょとんとし返した。

「別に、なんかぼーっとしてただけだから気にすんな。それよりもうSHR始まるぞ、朔人」
「おー…」

まぁ、朝からどたばたしてたし疲れたのかなぁ、と向日の言葉に追求するのをやめて鞄の中を整理し始める。
筆箱を見た瞬間、また消しゴムを買って来るのを忘れたのに気づき項垂れた。今日もシャーペンの後ろの消しゴムかぁ…あんま使いたくないんだけどなぁ。向日、消しゴム二個とか持ってないか――

あれ?さっき向日、俺の事名前で呼んだ?


「岳人ー、消しゴム二個持ってたりする?」

             


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