「抹茶?」
「は?」
「だから、芥川のもらったそれって、抹茶のムースポッキー?」

向日の意味わかんねぇという顔に、詳しく言い直した。
俺はムースポッキーは基本抹茶しか買わない。ポッキー全般ならたまに極細も買うが、昨日持ってたのは…確かムースポッキーだから抹茶だったはずだ。

「おう!何だよ、お前なんか知ってんのか?」

向日のその純粋に面倒臭い人捜しから解放されるといった自分勝手かつわかりやすい輝いた笑顔に、俺は考えた。

此処で俺だと答えたら、どうなる…?

「いやぁ、昨日抹茶のムースポッキーがどうとか一年の誰かが話してたの思い出してさぁ」
「え、それどの辺でだ?!」
「んー…F組とか、確かその辺のクラスの前通った時聞こえたような…」

聞こえなかったような…?いや、確実に聞こえてなかったけどな、はは。
向日がダッシュで教室を出るのを見送り、俺は小さくガッツポーズした。
見たか、俺のこの素晴らしいミスリード!芥川とのフラグなんて俺には要らないんだよ!ジンギスカンが美味しかったです、ちゃんちゃん!で終わりだ!


「向日、おるかー?」

教室を覗き込むようにしていきなり現れたその男に、俺は凝視したくなるのを堪えて勢いよく視線を逸らした。
オルカ?あの海の生物の?なんて返しはしない。そこからまたフラグが発生したらどうする。
現れたな、歩く面倒事2だと思われる関西弁。俺は絶対に何が何でもお前と関わらん!

「あ、自分、昨日芥川にお菓子あげとった奴やろ」

…?
視線を動かせば、クラスメート達が何やら俺に注目している。
何だろう、また汗かいてきた。まったく今日の俺はいやに代謝がいいなぁ?
俺は関西弁に視線を動かした。関西弁は胡散臭い笑顔で俺を見ている。
え、何?今の俺のこと?いやいや、俺は通りすがりの羊に餌付けしただけであって、それが芥川であるとは限らないじゃん?じゃん?!

「優しい奴やなぁって、そこにおった女の子と話しててん」
「ソーナンデスカー」
「向日来んなぁ…ほな、また休み時間に来るわ。誰か向日に言うといてやー」

関西弁は爆弾を投下するだけ投下して教室を出て行った。
え、何この言い逃れできない感じ。教室内に漂うこのいたたまれない空気。

さすがは歩く面倒事2。三分も経ってないのに俺を面倒事に引きずり戻しやがった。
…やっぱり俺、忍足嫌ーい。

             


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