「お前、クラスは?」
「Bです、はい」
軽い礼の言葉と共に俺の渡した200円でスポーツドリンクを買ったポニーテールは、それから腕を組み威圧的に聞いてきた。
何故かクラスを聞かれたんだが、これは明日乗り込むから覚悟しろよ、あ゛?的な意味ですか?
「ああ、向日と一緒か」
「え、岳人と知り合っ!…いですか?」
「幼稚舎時代から氷帝だからな」
成る程。じゃああれだ。もしも何かあったら岳人に助けを求めよう。どうしよう、もし「そいつ何人も病院送りにしてる有名な不良だぜ?朔人終わったな!」とか言われたら。とりあえずしばこう。
「名前は?」
「日達朔人です」
淡々と聞いてくるポニーテールに、俺は凄く反省しています。だから許してください、お願いします。という空気を常に保ちながら受け答えした。
すると、急にポニーテールは吹き出した。え、何々?電波系?怖っ!
「悪ぃ、からかいすぎた。あー、笑える。お前怯えすぎなんだよ。激ダサだぜ」
「え?今までの冗談?根性焼きとかされない?」
「しねぇよ!大体煙草吸わねぇし。スタミナ落ちるだろ?」
俺はまさかの急展開に、威圧的な空気を綺麗に消して笑いながら話すポニーテールを呆気にとられてぽかんと見ていた。
スタミナ…?やっぱりサッカー部か。まぁスポーツマンにはあんまり良いもんじゃ無いよな。それでも吸ってる奴は吸ってるけど。この年頃って、無駄に煙草吸ってる奴カッケーな風潮あるからな。
「じゃあ女だと思ったの怒ってない?」
「それはイラッときたけど」
「ひっ…!」
「嫌だけどよくあるから、んな気にしてねぇよ」
諦めたように苦笑いするポニーテールはもう怖くなくて、俺はさっきとはまた違った意味で呆気にとられた。
…兄貴だ!この人実は兄貴キャラだ!これから敬意を持ってポニーテールさんと呼ばせて頂こう!
「あ、俺はまだ名乗ってなかったよな。俺はD組のし…」
「亮ー!部活始まるぞー!」
ポニーテールさんが名乗ろうとしてくれた時、知らないジャージ姿の奴が此方に向かって叫んだ。
ポニーテールさんがそれを聞いて慌て出したから、彼はサッカー部の友達でポニーテールさんがリョウという名前なんだろう。
「ヤベッ…日達、じゃあまた今度な!200円サンキュー」
「お、おう!リョウさん部活頑張って!」
爽やかにイケメンスマイルをくれたリョウさんは、流石サッカー部な素晴らしい脚力で走っていった。
…名前、リョウか。リョウちゃんって呼んだら今度こそ屋上から落とされるかな…。