「朔人って、まだ跡部嫌いなのか?」
昼休みになるや否や、椅子の背もたれ側を向いて反対に座り直した前の席の岳人が聞いてきた質問に、俺はきょとんと岳人を見た。
あー…そういや、俺が跡部と関わらない理由そういう風に言ってたっけ。
「いや。でも何か無駄に人気だし派手だし、近寄りがたいと思う」
「悪い奴じゃねぇぞ?」
それはわかってるんだけどさぁ。
俺は曖昧にうーん、と唸った。キャラとか置いといても、あんまり関わり合いになりたいタイプじゃねぇんだよなぁ。
「朔人、忍足も嫌いだよねー」
「ぅお?!ジローいきなりやんな!マジビビったー」
突然後ろから肩に両手を置かれ、俺は声を裏返しながらジローに軽く怒った。岳人は気づいていたようで、にやにやと俺達を見ていた。コノヤロー。
「てか、別に忍足も嫌いじゃねぇって。苦手意識?みたいな」
「えー、二人とも面白いよ?」
「何か芸能人みたいじゃん」
「侑士なんてただの変態だぜ?」
「それ余計嫌だよ」
誰がただの変態とよろしくするものか。
俺の断固とした姿勢に岳人とジローは不満気な顔をした。別に嫌いじゃねぇって言ってるんだし、問題ねぇと思うんだがなぁ。
「はい、話終了ー」
「…試合は見に来いよ!」
「合点!」
「じゃあ二人とも学食行こー」
ジローに手を繋がれ、俺と岳人は引っ張られるように立たされた。俺は普通に座っていたからまだよろついた程度だったけど、岳人はあれ、一歩間違ったら顔面から転んでたぞ。
「あっぶね…っ!ジロー!」
「だって早く行かなきゃ行列になっちゃうCー!ほら、早く行こう!」
「しょうがねぇなぁ」
ジローのハイテンションに、岳人もため息を一回吐くだけでそれ以上何か言うことは無かった。
俺達三人は、合図でもしたかのように手を繋いだまま食堂に走り出した。男同士なのに手を繋いで違和感無いのは流石はジローと岳人…俺もか。前世と若干顔似てるから女顔だしな。
まぁ、これもまた一つの青春ってことで。