約一月ホグワーツで過ごすと、魔力は大分元に戻った。…とは言っても、前の一割にも満たないだろうが。
そして、リドルと一月も時間を過ごすうち、リドルが探していたそれを見つける日も近いとわかる。
「秘密の部屋…か」
リドル達の部屋で寛ぎながら、英語で呟き懐かしい名前に目を細めた。
秘密の部屋。つまりリドルは、この世からマグルを消したいのだろう。
「…一足先に、」
私が行こうか。秘密の部屋に。
入り方は普通とは違い、私だけの為にとアイツが作ったもの。私は蛇語は話せなかったから。
私は微々たる面倒臭さを感じつつも、今寝食を世話になっているリドルの為だと四つ足で立ち上がり、鍵の掛けられたドアの前に歩いていった。
「アロホモラ」
簡単に鍵の開いたドアをそのまま魔法で少し開き、滑るように外に出る。このまま鍵をかけずに行き盗難等にあうと困るため、閉錠呪文を唱えてから走り出す。
スリザリン寮を脱け出した私は、階段を駆け上がり三階に来た。アイツは性格悪いから、他の幾つもある入口の内、私が入れるものはトイレにしか作ってくれなかった。
私は三階にある女子トイレの一つに入った。
「…リーラ。開けて、サラザール」
秘密の部屋に続く通路に片足をかけて囁くように言えば、猫の姿でも道は開かれた。…と言うか、底の見えない穴だけど。
私は躊躇することなくそこに飛び降りた。
床が見えて私が魔法で落下速度を落とすより先に、私の身体は優しい風により浮き上がった。
「…ふん、相変わらずキザな奴」
本人の死後の魔法なのに文句をつける辺り、私も大概可愛げの無い女だと思う。この先もそんなもの出す予定はないが。
そのまま奥へと進んで行けば、また大きな扉。本来なら此処でもパーセルタングを使用するのだけど、扉は私が前に行くだけで勝手に開いた。
微妙な気持ちになりながら数歩歩けば見えた、私の体の関係であの頃より数倍大きく見える鱗だらけの巨体に私は目を瞑る。
「バジリスク、おはよう。お目覚めの時間よ」
気配が動き、巨体が私を見下ろす視線を感じる。
恐怖?そんなものあるはずがない。
「お前の主人、忘れたわけないでしょう?」
何か蛇語で話すバジリスクが何を言っているかなんて私にはわからないが、私が目を開ければ頭を垂れているバジリスク。それが答えだ。
バジリスクはかつて、私とサラザールで飼っていた僕なんだから。
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