リドルは冬になると、たまに私を暖房器具扱いしてベッドまで連れ込む事がある。
もしかしたらそれはただの口実で、リドルにも寂しい気持ちになる時があるのかもしれない。自分以外の体温を感じたいと、いっそ本人さえ気づいていないところで無意識に思って私を抱き締めながら寝るのかもしれない。
言及はしないが。
「リーラ」
腕の中の私にすら聞き取るのがやっとの掠れた小さな声でリドルが呟く。
度々あるこの行為は、寝言なのか意識があるのか定かではない。寝言に返事をすると夢から帰って来れなくなると聞いた事があるので、私は返事をしない。前世でも驚かれたが、私は似合わなくもそういう迷信は気にする質だ。
「最近さ、オリオン挙動不審なんだよね。人を殺したからかな…まだ早かったのかな。僕、時期見誤ったかな。アイツの事は、結構信頼の置ける部下だと、思ってるんだけど」
…リドル、それは考え過ぎの見当違いだと思うぞ。アイツは今、恋に現を抜かしているだけだ。
「僕には、リーラだけでいい。でも、僕のしたい事にはたくさんの協力者が必要だ。強く、多く」
難しいね、とリドルは笑う。
なんだ、やっぱりお前誤魔化してるけど寂しいんだろう。
オリオンが自分から離れるのが嫌なんだろう。確かに上司と部下ではあるが、友人でもある。それぐらい認めて構わないと、私は思うんだがな。
リーラだけで、いいなぁ…?
それは流石に言われた事がない。嬉しいとも思う。でも。
「もっと、頑張らなきゃだね」
さっきまでより強く、一度ぎゅっと私を抱き締めたリドルはその先話す事はなく、やがて寝息が聞こえ始めた。
結局リドルも、オリオンみたいにそのうち好きな女でも出来て、くっついて、私のこの抱き枕の位置も他の女のものになるんだろうな。
それは少し寂しいな。
でも、今リドルが生きてるって事は、やっぱり世の中そういうものなんだと、思う。
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