ホグワーツの散歩をするのはいいが、昔住んでいた勝手知ったるこの場所に目新しいものも少ない為すぐに飽きて部屋に帰った。
あー暇だ。リドルめ、闇の何とかを色々する前にペットの猫を可愛がる事を忘れるとは。お前が居ない間に他の奴を気に入っても知らんぞ。

部屋に帰ると、案の定気配の通りアルファードだけが居た。
暇だからお前何か一芸しろよ。と試しに視線だけで訴えてみれば、アルファードは何かを抱えて近づいて来る。

「ほら」

どさどさと目の前に置かれた山に、首を傾げる。近くの一つに目をやれば、猫用高級にぼしと書かれていた。

「何だ、この大量の菓子は」
「前の貸し返してんだよ。あ?お前なんだろ、あの黒髪美人」
「美人、なぁ…?それはどうも」

からかうように笑えば、アルファードはいかにも免疫ありませんとでも言うように顔を赤らめた。猫相手に赤面とは、見られればまた愉快な噂が立つに違いない。
…まぁ、安心しろ。気づいていないとはいえ猫に恋まがいの感情を覚えているオリオンよりましだ。

「顔は、だからな…!顔ッ!」
「解った解った。それで、命を助けた礼がこれか?へぇ、この程度か」

必死に弁解するアルファードを流し、袋に入ったままの猫用と書かれた菓子を足先で弾いてやれば、アルファードの頬が引きつった。

「足りねぇってか?」
「元々菓子は好かん。まぁ、別に貴様は返さんでもいいんだぞ?借りも返さない程度の輩だと私が思うだけだ」

意地悪く笑ってやれば、アルファードは拳を握り締めぷるぷると震え出した。私はアルファードに背を向け、リドルから貰ったボールを前脚で特に意味無く軽く転がす。
借りなんて、簡単に返されたらつまらないじゃないか。もっと有効に、返すべき時に返してもらわなくては。


「ッ、お前、一編死んで性格直して来いよ…!」

…。
私はボールを前足で弾き、前に飛ばす。

「生憎、直らなかったな」

しいて言うなら少し丸くなって、少し人を信じられるようになったぐらい。

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