僕は格好いいと言うよりかわいい顔で、先輩からも同級生からも後輩からも大層好かれている。
僕は四年長屋の屋根の上から学園を見下ろしていた。
愛とは何ぞや。恋とは何ぞや。
「渡一!」
声が聞こえて、仕方なく首から上だけ後ろに倒して見れば、平滝夜叉丸がいた。ナルシスト。嫌いだ。
「渡一、夕食に行こう!」
「一人で行けよ」
「お、お前と一緒に食べたいんだ!悪いかっ!」
見るからに顔の赤さからツンデレだとわかる言葉を叫んだナルシストに、僕は冷めた目を向ける。悪いよ。僕、お前嫌いだもん。
「しばらく食堂行きたくない」
「…何でだ?」
「天女嫌い」
初めて見た時から、もう無理。まず僕、女大っ嫌いだし。僕が女なのに好きなのは食堂のおばちゃんぐらいだ。天女のあの人とか、もう生理的にやだ。
「なら私がおばちゃんから何か食事をもらってきてやろう。だから一緒に食べよう」
「…うん」
仕方ない。背に腹は変えられん。ちょっと色々我慢するだけだ。何の問題も無いさ。
二つのお盆を持ちながら帰ってきたナルシストの後ろには、綾部と田村と斉藤も居て、僕はちょっと安心しながら皆で食事をとった。さすがはおばちゃん。おいしい。
不満げなナルシストを無視して、これからも皆でご飯を食べることを約束した僕は、真っ赤な夕日を見上げた。天女、天女…ああ。
つまり僕は、天女と呼ばれるあの女が嫌いなのです。