「君に魔法をあげよう!」
僕が生を受けてから初めて聞いた言葉はそれだった。信じられないかもしれないが、それは僕が母のお腹から出る前の出来事で、なのに僕はその言葉を今でも覚えている。
笑うかもしれないが、あれはきっと神様の言葉だった。
だって確かに僕は、忍術学園に入学するや否や最悪な魔法を発症したから。
僕はまた、一人で池の中に居た。
死にたいんじゃない。死ぬなら全部終わった後。
此処は――死に近く感じるから、落ち着くだけだよ。
「渡一!」
振り返る。滝が居る。でもあの頃とは全てが違う。
あの頃のお前は、そんな顔で僕を見なかったのに。
魔法なんて、嫌いだ。
「何」
「…」
隠しもせずに冷たい目で滝を見る僕は、本当に性格悪い。
こんな奴、普通皆に好かれるわけないじゃん。普段?ただの八方美人だろ。バッカじゃないの?
「好き」を作る魔法なんて、消えてしまえばいいのに――っ!
「渡一…は、」
「何だよ」
敵意を込めた目で睨む僕に、滝は泣きそうな顔で笑った。
その顔が、僕に手を引かれていつも後ろを付いてきたあの頃の滝に重なる。
僕はあの頃今より病弱で、そんな僕が過呼吸になっては僕より辛そうに僕を見ていたあの頃の滝に重なる。
…やめろよ。そんな風に、面影見せんな。二度と僕を助けてはくれないくせに。
僕はひねくれてるから一度だって言わなかったけど、僕が苦しくなってもお前が泣きそうな顔してくれれば、それだけで何より愛を感じたんだよ。ちゃんと、笑えたんだよ。
「私のこと、嫌い…?」
好きだったよ、大好きだった。
お前が魔法になんてかかって、他の奴等と同じ顔して「好き」なんて言い出すまでは。
「だいっきらい」
お前は何も悪くない。
嫌いは僕の自己防衛だけど、僕の精一杯の優しさだ。
つまり、僕は神様が嫌いです。