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四限目の体育が終わって昼休み、教室に戻るとすぐ先に帰っていたらしいよっしーが近寄って来た。

「サララマジでテニス上手かったな!菅野ちゃんにも勝てるんじゃね?」
「ありがとう、でもそれは言い過ぎ。菅野ちゃんのあのはちゃめちゃな運動神経には勝てる気がしない」

笑いながら否定して、自分の席に戻り赤也君のお迎えが来る前にお弁当を用意した。さすがに赤也君のクラスにまでは行かないにしても自分の教室前で待っていようと廊下に繋がるドアに向かう。…いやむしろ私、赤也君のクラスも知らないなぁ。

「あれ、あずみん生徒会?」
「安住さんは生徒会以外も色々とお忙しいんですよ」

あずみんがちょうど廊下に手洗い場と逆の方向に行こうとするのを不思議に思って聞けば、はぐらかすように笑んでひらひらと後ろ手を振りながら行ってしまった。もしかしたら、その背中を少し睨んでしまったかもしれない。

「あれ、菅野ちゃんも何処か行くの?」
「ん、今日15日だから」
「え?」

よくわからない理屈で菅野ちゃんも教室を出て行った。後で聞いてみよう。理解出来る理由を言われるとは限らないけど。
じゃあよっしーはと思ったら普通に他の友達の輪に入っていた。本当に友達多いなぁ…。
廊下に出て、よっしーのコミュニケーション能力の高さに凄いよなぁとぼんやり考えていると、ドタバタと走る音が聞こえて音のする方に顔を向けた。その姿を視界に捉えて思わず笑そうになった。

「わー!先輩ごめんなさい、遅れました!数学の堀内マジチャイム守れよ!てか、ジャッカル先輩も何で急いでる時に限って話し掛けて来るかなぁ…!」
「ふふ、お疲れ様。大丈夫だよ、行こっか」

走ってるところを真田君に見られなかっただけ運は尽きてないけどね、と笑っているといきなり強めに腕を引かれた。

「紗良先輩っ!笑う時、下見ない!」
「あ、ごめんごめん忘れてた」

珍しく私が怒られる側になって、正直ちょっと面白いなと思いながら謝っていつもの場所に並んで歩き出した。
今日も空いていた第三理科準備室に入ると、赤也君は嬉しそうに、先輩達新しい場所でも見つけたのかなー?じゃあ此処は俺達のもんッスね!と言いながら腰を下ろした。

「つーか俺思ったんスけど、付き合うって何すりゃいいんスか?」
「ん?」

突拍子もない質問に、お弁当を開いていた手を止め赤也君をじっと見た。物凄く今更っていうか何ていうか…そもそも、その質問が出るって事はもしかして…?

「…赤也君、私が初恋人とか言わないよね?」
「え。…そ、そりゃそうっすよー!恋人とか今までえー…十人は居ましたね!」

赤也君は両手をパーにして引き攣った笑顔を浮かべる。
この子はそれを私が見破れず信じるとでも本気で思っているんだろうか。…思ってるんだろうな。

「別に無理して何かする必要は無いんじゃない?恋人らしくなんて気を張らなくても結構成るように成るもんだよ」
「…でも、俺達今のとこ一緒に昼食べてるだけッスよね?」

不服そうに言った赤也君は本当に謎だ。恋人の立ち位置が欲しかっただけなのに、どうして恋人らしさに拘っているような事を言うんだろう?仮恋人なんだから、らしくなくて当たり前なのに。

「あれ、メール?」

話の途中だけど、メールが来た事よりその送信人物に驚いた私は、急用だったら困ると慌ててそのメールを開いた。

「……」
「…どうかしたんスか?顔青いッスよ?」

私は何か何でもいいから答えようとして、だけど開いた口からは声も出なくて曖昧に笑うしか出来なかった。
頭が痛い。昨日の私は彼にまで何をしたのか。
何も答えずメールの受信画面を開いたまま眉間を抑える私に痺れを切らした赤也君が携帯を覗き込んで来て、反応が遅れた私は画面を見られてしまった。

「…跡部景吾?って、えぇえ?!」

ああ、赤也君もやっぱり知ってるのか。

                


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