34 「丸井君、俺の友達に絡まないでくださいー」 はたと突然響いたよっしーの声に現実に引き戻された。それが良かったのか悪かったのかはまだ私、にはわからなかったけれど。 「あれ、よっしー?え、よっしー水代さんと友達なのかよ?!お前どんだけ交友関係広いんだよ!」 「サララは今や、ナウでヤングな言い方すると俺等三人のいつメンなんですー。ついでに俺は六限がまさかの授業変更で体育無くなった事に超不機嫌ですー。なー、あずみん」 「そうだね」 いつの間にか私の後ろに居た菅野ちゃんが、よっしーに便乗するように話し出し、今まで席に座ってはいても携帯を弄っていて果敢せずだったあずみんも同意した。 私はぼんやりと、菅野ちゃんっていっつも私にはにこにこしてるしキャラがキャラだからあんまり思わないけど、背高いし金髪だしつり目だしたまに威圧感あるよなぁと考えていた。 「サララ、今日調子悪そうだよね。早退する?先生に言っとくよ?」 「え?…いや、後六限だけだし体調が悪いわけじゃないから」 そんな事きっとわかってるだろうに、前触れなくそんな事を言うあずみんに、やり辛いなと思いすぐその考えを打ち消す。ああ矛盾だらけだ。確かに調子が悪い。 「…そりゃ、水代さんも最近色々あっただろうし疲れてるよな。ごめんな、いきなり変な話して」 「いや、ううん、私は別に、」 「そうだぁ!丸井が全て悪い!丸井が全面的に悪い!サララへの正式な謝罪を求める!」 「俺が悪いのはわぁかったから!よっしーうぜぇ入って来んな!」 「それより予鈴鳴ったけども。赤毛、現国遅刻したら当てられっぞ?」 「赤毛って…」 げんなりと疲れた顔をする丸井君に、この人達敵に回したくないなと苦笑した。たぶん一番敵に回して厄介なのはあずみんだろうけど。 「そういう事だから、佐野ちゃん早く教科書貸してあげたら?」 「あ、うん!そうだね!」 よっしーの言葉に、顔を伏せていた佐野さんが慌てて教科書を机から出し笑顔で丸井君に渡す。 「今度ジュース奢ってね!」 「はいはい、あかりって何気にちゃっかりしてるよな」 「正当な報酬ですー」 「わかったよ、サンキューな」 ああ、優しい目をしてるな。つまりそういう事か。 「じゃ、俺B組帰るから!水代さんマジでごめんなー!あかり、また明日!」 「うん、また明日ー!」 なんと返したらいいかわからず無言で手を振り終えた頃にはよっしーも菅野ちゃんも自分の席に戻っていて、うちのクラスは次体育…じゃなくて英語か、と頭を切り替えようとした私の耳に、ぽつりとあずみんの声が響いた。 「青いなぁ」 ちゃんと意味がわかってしまった自分を呪った。 |