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「菅野君、紗良ちゃんに過保護だね」
「そう?」

意識した事無かったから気づかなかったけど、佐野さんは私の斜め前の席だった。つまりあずみんの隣。まぁ席が変わった日から経った日数とそれに合わない濃い経験の数々を考えれば、気づかなくても仕方ないと思う。
先生来るまで話そ?と笑顔での申し出に頷いた私は、佐野さんと話している。

「よっしーは、よくわかんないけど。でも安住君も過保護だよね」
「僕?僕は女の子に優しいだけだよ」
「えー、そうかな?他の女の子とは菅野君も安住君も違うような…紗良ちゃんも思わない?」
「友達枠だからだと思うよ」

ふーん、といかにもつまらなさそうに言った佐野さんに苦笑する。
私に恋愛感情を期待するだけ無駄だよ。

「あ、そういえば紗良ちゃんって幸村君と…」
「あー、うん」
「…ち、違うの!勘違いしないでね!私恋の始まりには首突っ込みたがるけど、逆はそこまで無神経じゃない、と思う!」
「信じるよ」

必死に弁解する佐野さんを落ち着けようと、ただそれだけ微笑みながら告げた。
佐野さんは少し気まずそうな顔をしながらも、空気を入れ替える小さく喉を鳴らした。

「あーのね、私が言いたかったのは幸村君の友達の、」

佐野さんの言葉を遮るように勢い良く教室のドアが開き、現国の先生が入って来た。いつも思うけど、もう少し静かにドアを開け閉め出来ないのか。

「もー!先生バッドタイミングー。紗良ちゃん、続き授業終わったら聞いてー!」
「あはは、うん。了解」

むっと可愛らしく顔をしかめた佐野さんに、私は簡単に了承する。佐野さんが前を向き、授業が始まる。予め開いておいた教科書とノートを見て、話し始めた先生の言葉に文字を追おうと思った直後、机がテン、テン、と軽いプラスチック音で叩かれた。
顔を上げて前を見れば、シャーペンで私の机を叩いていたあずみんが軽く笑む。それから椅子を私の机に着く程後ろに下げ、私にしか聞こえないだろう本当に小さな声で話し始める。

「サララってさー」
「え、うん」
「佐野さんみたいな女子苦手でしょ?絶対」

にやっと笑いながらそんな事を聞いてくるあずみんに、私は呆れた顔を返した。

「どうしてそういう事聞くかなー?むしろ聞いてないし。確信してるし」
「ごめんごめん、確かめたい質なんだよ」

あずみんの一見天使の笑顔で謝られれば大抵の人は許すのかもしれませんけど、その笑顔、私にはまぁ悪いと思ってないけどって顔にしか見えないです。
…いいけどさ、別に佐野さんと話してるのにそんな大層な理由ないし。

「たまにはいいかなって」
「そっかー」

あずみんは私の笑顔での言葉にあっさり引いた。たったこれだけの内緒話。
…なんか釈然としないな。本当に何でも無いのに。

何でも無い、はずなのに。

                


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