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「なんか紗良先輩のクラスって変わってますねー」

前を歩く赤也君が、なけなしのオブラートに包んで…と言うか明らかに包めてない言い方でさっきのクラスの様子の話を始めた。

「そう?赤也君のクラスはどんな感じなの?」
「俺のクラスはー…とにかく煩ぇっすかね?あ、俺含めて」

けらけらと笑う赤也君につられて笑う。赤也君と居ると頭を使わなくていいから楽かもしれない。

「でも紗良先輩のクラスもよっしー先輩とか煩ぇっしょ?後菅野先輩も同じクラスだっけ?」
「そうだね、二人は。私は楽しいけどね」

…。
……?
よっしーと菅野ちゃんを思い浮かべて笑っていれば、いつの間にか隣まで来ていた赤也君が私の顔を覗き込むようにしながら黙り込んでいて、足を止める。

「…ど、どうしたの?」
「いえ何でもー」

何でもありそうに拗ねたような顔をした赤也君がまた前を歩いて、この前と同じく第三理科準備室に先に行き中を確かめると、さっきの拗ねたような表情が嘘のようにいつもの笑顔で手招きした。

「セーフ?」
「です」

そういえば、これから第三理科準備室が開いてない時は何処でご飯を食べればいいんだろう?まぁ、赤也君なら他にもいい場所知ってそうな気もするけど。
二人で第三理科準備室に入って、ドアを閉める。
そのまま二人並んで座ってお弁当の包みを開き、食べ始めた。…うーん、赤也君と何話していいかまだわからないな。

「あ。そうだ、よっしーが言ってたんだけど、もしかして赤也君誕生日近い?」
「え、はい。9月25日です」
「わぁ、二週間もう切ってるよね?本当に近いね」

ハンバーグを口に運びながら考える。
じゃあ一応彼女としては何かプレゼント用意しなきゃだな…赤也君の好きそうなもの?…ゲーム?はもうたくさん持ってそうだし、テニス用品?は拘りあるだろうし、…わからない。
うん、後でよっしーに相談しよう。

「俺からも質問なんすけど、あ、その前に紗良先輩の誕生日は?」
「3月5日」
「うわ、3年自由登校期間じゃないっすか。俺授業サボろっかなー」

こらこら。
てか、そもそも3月まで君と私が付き合ってる確率なんてほぼ0だから。気にする必要ないから。

「それで、聞きたい事あるんじゃなかったっけ?」
「そう!紗良先輩、よっしー先輩達の事いつの間にあだ名で呼んでたんすか?先週は呼んでなかったと思ったんすけど」
「ああ、先週教室帰ってすぐね。やっぱり話相手してくれる友達は欲しいし、あだ名ぐらいいいかなって」

幸村君と別れてから人とまともに会話する事が無くなって、仁王君と久々に会話させてもらった時に思った。やっぱり人間、会話するのは大切だ。
何も話さないでいるとぐちゃぐちゃと要らない事が頭を埋める。

「…らい、れ、…のに」
「え?何か言った?」
「いえ別に」

赤也君が視線を逸らしながら言った言葉が聞き取れなくて聞き返すと、また笑顔ではぐらかされた。
うーん…赤也君はそればっかりだな。

「赤也君、言いたい事あるならはっきり言っていいよ?あれでしょ、私達一応恋人同士で気使い合う関係じゃない…でしょ?」

この前赤也君に言われた事をそのまま返せば、赤也君は目を見開いて、それから黙った。
そして意を決したように私を見る。

――次の瞬間、赤也君が言った言葉に私はど肝を抜かれる事となる。

                


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